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一般

2017年3月24日 (金)

最高裁の遺族補償年金の男女差別を容認する判決

本年3月21日午後3時、堺市内の中学校の教師であった妻が過労自殺した件につき、訴訟で公務上を認められたが、55才未満の夫であるということで遺族補償年金は支給されず、遺族補償一時金しか支給されなかった件についての最高裁判決が下った。

当事者のTさん、そして代理人の私と成見弁護士、そして20名近くの支援の傍聴者の前で、最高裁第三小法廷は、5人の裁判官の全員一致で上告棄却の判決を下した。

地公災基金も労災保険も、遺族補償年金は遺族が妻のときは年齢制限がないが、夫のときは55才以上でないと支給されず、遺族厚生・基礎年金についても同様の定めがある。
日本の年金制度は、妻・夫という性別によって年金の受給権者を区別している。

1審の大阪地裁判決は、この制度が定められた(地公災については昭和42年)当時の専業主婦世帯を前提とした制度であり、共稼ぎ世帯が一般化した現在においては、立法の基礎となった社会的・経済的事実(立法事実)は変化しており、憲法14条の平等原則に反するとして違憲判決を下した。

これに対し大阪高裁は、妻は「一般に独力で生計を維持することは困難」であることを強調し、合憲とする逆転判決を下した。

最高裁は、
「地方公務員災害補償法の定める遺族補償年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障の性格を有する制度というべきところ、その受給の要件を定める地方公務員災害補償法32条1項ただし書の規定は、妻以外の遺族について一定の年齢に達していることを受給の要件としているが、男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い、平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況に鑑み、妻について一定の年齢に達していることを受給の要件としないことは、上告人に対する不支給処分が行われた当時においても合理的な理由を欠くものということはできない。したがって、地方公務員災害補償法32条1項ただし書及び附則7条の2第2項のうち、死亡した職員の夫について、当該職員の死亡の当時一定の年齢に達していることを受給の要件としている部分が憲法14条1項に違反するということはできない。」
として、高裁判決同様、合憲であるとして上告を棄却した。

Tさんとその支援者(多くは過労死・過労自殺のご遺族)は、判決後集いを持って、この判決への感想を語りあった。
男女共同参画社会を国として目指すなかで、年金制度は「夫は外で、妻は家庭」との過去の残滓の考えを払拭できない。

この最高裁の判断は、年金の受給権者である夫に対する差別以上に、「一般に独力で生計を維持することが困難」である存在とされている妻に対する差別である。

せめて少数意見との思いもあったが、全員一致の判決とは・・・。
しかし、中島みゆきの歌にあるように「そんな時代もあーったねと♪」と振り返られる日が近いことを望むとともに、立法府、そして「一億総活躍社会」を標榜する行政府としても、この制度の改正に努めてもらいたいものだ。

                           <朝日新聞2017.3.22>

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2017年3月14日 (火)

法定休日の限度時間を含んだ
上限規制なくして過労死の防止なし

36協定の特別条項の上限規制をめぐって、時間外労働の限度を100時間とするか、100時間未満とするかが国会で争点になっている。
厚労省の認定基準は、発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間のいずれかの期間で、時間外がおおむね80時間を超えたときも過労死として認定するとしている。
過労死ラインは、月100時間でなく、月80時間として、上限規制の議論を深めるべきだ。

36協定では、時間外労働と法定休日労働の限度を定めている。
問題なのは、休日労働についての上限規制が全く議論されていないことだ。
時間外労働のうちには週1日の法定休日は含まれていない。多くの会社(事業場)の36協定では、全ての法定休日の労働を認める内容になっている。

仮に、時間外労働が告示で定められた一般条項の限度である月45時間となっていても、法定休日に月4日、1日10時間勤務すれば月80時間の過労死ラインを超えることになる。

時間外労働と法定休日労働をあわせた限度時間規制をしないと、過労死・過労自殺は防止できない。

それを被災者、遺族の立場でその救済に取り組む弁護士として痛感する。

2017年2月24日 (金)

経団連会長の発言と東レの三六協定

報道によれば、「経団連の榊原定征会長は20日の記者会見で、政府の働き方改革実現会議で議論している残業時間の上限規制に関し、繁忙期は月100時間まで認めるのが望ましいとの考えを示した。一段と厳しく抑えるよう求める連合の主張に対し『実態と懸け離れた規制は企業の競争力を損なう。現実を踏まえた規制が必要だ』と反論した。」(毎日2月21日(火)朝刊)。

厚労省の過労死の認定基準では、発症前の時間外労働がおおむね月100時間を超えるときは、原則として業務上と判断するとしている。2ヵ月間ないし6ヵ月間のいずれかの期間で月当たりおおむね80時間を超えるときも同様だ。

日本の経済界を代表する経団連会長の発言は、過労死問題に取り組んできた弁護士として到底容認できない。

榊原会長の出身企業は東レだが、東レの三六協定(平成28年3月締結)はつぎのとおりだ。
所定労働時間基準で、特別条項は月100時間、年間900時間まで認められる協定だ。

貴方はどう考えるだろうか。

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2017年2月 9日 (木)

政府案の三六協定では過労死は防止できない

三六協定の上限規制が月平均60時間、年間720時間の政府案に沿って「働き方改革実現会議」で意見集約していると報道されている。(日経2月2日朝刊)

過労死・過労自殺は、新たなプロジェクトの担当になるなど、業務が繁忙となった期間に生じている。

国の定めた過労死の認定基準は、発症前1ヵ月に月100時間、あるいは2ヵ月間ないし6ヵ月間のいずれかの期間で月平均80時間を超える時は、原則として業務上と判断すると定めている。

政府の検討案では、月平均で60時間だから、年間720時間を超えない限り、繁忙期には1ヵ月に限るものの月100時間、あるいは翌月と合わせて月平均80時間の時間外労働も可能な案となっている。

また、過労自殺した電通の女性新入社員は、時間外労働が2倍以上に増加して月100時間を超えた、との、過労自殺の認定基準に従って業務上と判断されている。

過労死・過労自殺を出さないため三六協定の上限規制の議論がなされてきたのに、政府の三六協定の検討案は過労死・過労自殺を防止するに足りるものではなく、かえってその現状を追認するものとの謗りを免れない。

2017年1月26日 (木)

過労死防止啓発授業(大阪府立三国丘高校)の
講師として参加して

今日1月21日(土)は過労死等防止全国センターと過労死防止学会の会合があるため、新幹線で東京に向かっている。関ヶ原は白銀一色、陽が田畑に積もった雪に反射して快くまぶしい。

きのうは堺の三国丘高校で、過労死防止の啓発授業。放課後の自由参加、加えて大学受験の最中という時期のせいか、当初参加生徒は1名とのメール連絡もあった。心配して教室の教壇の椅子に座って待っていると、次々と生徒が入室し、29名が参加する。
この高校は、校長先生の名刺にはSGH(スーパーグローバルハイスクール)と表示されており、地域の名門校だ。
一人一人の生徒を見渡しながら、私が担当した「優良企業」の過労死、過労自殺の事例と、その悲劇が生じた原因について話した。

私の高校時代の進路志望の1つに高校教師という選択肢もあったので、生徒相手の話には力が入り、生徒たちも、私の勝手な思い込みかもしれないが、熱心に聞いてくれている。

50分の話のあと、生徒の質問は、
・過労死等は日本に特有な問題なのか。他の国では同じような問題が起きていないのか。
・労働時間の適正な把握がされていないことが過労死等の原因ならば、それに対する国の対策はどうなっているのか。
など、的確な質問が寄せられた。

この生徒たちの殆どは大学に進学したのち「優良企業」に就職し、それまで育ってきた「友情」「連帯」「思いやり」の世界が稀薄な場での経験をするなか苦悩することになるのだろう。
先生方から聞いた話では、そんな場では私は弱いから耐えられないとの生徒の感想もあったという。
つたない私の話が、生徒たちが就職した後に出会う矛盾や苦悩を乗り越える力になれば幸いとの思いで、氷雨のやんだ学校を後にした。

なお、厚生労働省は、2年前の過労死等防止対策推進法の施行をうけて、過労死等防止のため中・高・大学等での啓発授業を国の予算で実施している。
啓発授業実施の希望があれば連絡(連絡先はこのブログの“ プロフィール”に掲載)下さい。

2016年12月28日 (水)

日本経団連役員企業の三六協定
まず隗より始めよ。

日本経団連の会長、副会長出身会社の本社における平成27年度の三六協定の特別条項について、全社分の情報公開が各労働局から開示された。
以下のとおりだ。17社中15社が過労死ラインを超えた三六協定を締結している。

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私が事務局長であった当時、株主オンブズマンは平成20年に同様の情報公開請求をしたが、その結果はつぎのとおりだ。

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改善が進んでいるとは言い難い。

日本を代表するトップ会社、しかも日本の大企業の模範となるべき会社において、心身の健康を損ねるおそれのある長時間労働を容認する三六協定が存在する状態では、過労死等の防止は覚束ない。

三六協定は会社(事業場)と過半数を組織する労働組合(それがないときは過半数の労働者の代表)との間で締結されている。過労死等が生じた時、労働者の健康を守ることができない三六協定を締結した労働組合も、その責任を問われる可能性があることを心すべきであろう。
労働組合、とりわけ日本経団連の会長、副会長出身会社の労働組合にとって、過労死ラインを超える三六協定を是正させることは急務である。

しつこいようだが、三六協定の上限規制のみでは、過労死等の防止の必要条件に留まる。
労働時間の適正把握があってこそ、三六協定が意義あるものになることを忘れてはならない。
労働時間の適正把握の欠落した下では、三六協定の限度時間は過少申告を生み出し、ひいては過労死等の温床ともなり得ることは、電通過労自殺事件をはじめ、多くの過労死等の事件の教えるところだ。

2016年12月16日 (金)

過労死ラインを超えた日本経団連
会長・副会長の出身会社(本社)の三六協定

私は、日本で過労死・過労自殺が生じる最大の要因は、「ブラック企業」においては勿論、電通はじめ「優良」と称されている「隠れブラック企業」においても労働時間の適正把握の懈怠の点にあることを、このブログでも再三述べてきた。

三六協定やコンプライアンスシステムも、この点が欠如していれば、狂った体温計では患者の病状を知ることができないのと同様、職場の長時間労働は把握できない。

現在は青天井となっている三六協定の特別条項の限度時間について、限度時間を定める法改正が検討されているが、まずは、適正な労働時間の把握をなすべきことを罰則をもって義務づける法改正である。

しかし、過労死ライン(厚労省の認定基準は、月平均80時間の時間外労働が2ヵ月間ないし6ヵ月間に認められるときは、過労死として認定するとしている。)を超える三六協定を放置することは、そのような長時間労働に対する労使含めての問題意識を稀薄化させ、規範意識を失わせる結果となる。

大阪で過労死に取り組む私たち弁護士は、10年程前に三六協定の情報公開訴訟に取り組み、判決で勝訴し、一部不開示部分はあるものの、その公開が認められるようになった。以降、私は、情報公開請求により三六協定ウォッチングをしている。

過労死防止法が施行され2年余り、各企業とりわけ日本を代表する日本経団連の会長・副会長の出身企業(本社)においては、過労死ラインを超えた三六協定は一掃されたと思っていた。
しかし、平成27年度(多くは平成28年3月に締結)の情報公開請求で得た、三六協定の特別条項で認められた職種別の最長の時間外労働の限度時間は、つぎのとおりだ。

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会長の出身企業の東レをはじめ、16社中14社(日本生命については現在公開待ち)で、過労死ラインを超えた長時間労働を認めたものとなっている。

これをどう考えるか。

次回のブログでは、かつての日本経団連の会長・副会長の出身企業の三六協定と比較して検討してみる。

2016年11月25日 (金)

村上春樹の長編小説の書き方に教えられたこと

11月18日(金)は静岡へ、19日(土)は広島へ、20日(日)は島根の浜田へ、21日(月)は東京から新潟の長岡へ、そして22日の今、早朝東京を新幹線で発って岡山に向かっている。どこを列車等で走っても紅葉の盛り、山燃える季節です。
変なルートの旅行とお思いでしょうが、旅行でなく、過労死や過労自殺の裁判や、ご遺族との打合せのための出張なんです。
過労死のご遺族が話を聞きたがっているとの連絡があると、すぐに全国どこでも飛んでいってしまう、それが私の「悪いくせ」なのです。

車中で裁判のための書面(準備書面といいます)を書こうと思ったのですが、村上春樹の『職業としての小説家』(新潮文庫)の「時間を味方につける―長編小説を書くこと」を読んでいます。
長編小説を書くには「仕込みの時間」をかけて「じっくり養生する」こと、その時間が家庭のお風呂と違う温泉のように「いや、じんわりくるんだよ、これが。うまくいえないけどさ」の差を生み出す。
第一稿を書き終えた後も、休みの時間をとることで「養生しながら」何度も書き直し、第三者(彼の場合は奥さんとのこと)の意見を聞き、「けちをつけられた部分があれば何はともあれ書き直そうぜ」、こんな「トンカチ仕事」を「ゲラ」が出来た後も繰り返し、「力の及ぶ限りにおいて最良のもの」を書くべく努力する。
「もう少し時間があればもっとうまく書けたんだけどね」「締切りに追われないと小説なんて書けないよ」、そんな時間に追われたせわしない書き方でなく、自分の意志で時間をコントロールできるようにならなくてはならない。そのためには日々規則性をもって原稿を書き、そのためにはフィジカルにも鍛えておかなくてはならない。(彼はフルマラソンやトライアスロンもする。)
長編小説家としての彼の持論を述べています。(是非本文を読んで下さい。)

村上春樹の長編小説を書くにあたってのこの持論は、弁護士である私が、長編の最終準備書面を書くにあたっても多くのことを教えているように思いました。
もっとも弁護士の場合は、準備書面は長編であることより、論点に集中、凝縮したものが求められるのですが。
コンマの1つにもこだわる時間をかけた「トンカチ仕事」によって、裁判官を温泉の如く「ジワ~」と説得できる準備書面が完成できるのでしょう。

こんな駄文を書いていたおかげで晴天の富士山を見すごしてしまいました。

2016年11月21日 (月)

ブラック企業と隠れブラック企業

過労死問題について語られるとき「ブラック企業」という言葉が使われることが多い。
「ブラック企業」とは何か。色々言われているが、私は過労死との関係で考えるとき、「労働者の心身の健康を損ねるおそれのある社内体制のある企業」と考えている。

私が担当した大手居酒屋チェーンの石山駅店に大卒で入社した吹上元康さんが、24才の若さで(電通過労自殺事件の2人も24才)心疾患で死亡した事件がその典型と言えよう。
この企業は、初任給を約19万円(残業代別途支給)と就活情報に表示していた。
入社時の研修で、19万円のうち12万円が基本給、7万円は時間外勤務月80時間分の「役割給」との説明がされ、実際4月に就職後、月100時間近い勤務に就くなか9月に過労死している。
時間外労働の限度時間を定めた三六協定も、特別条項で月100時間と定めている。
厚労省の過労死の認定基準は、発症前1ヵ月間におおむね100時間、あるいは2ヵ月間ないし6ヵ月間に月あたりおおむね80時間の時間外労働が認められるときは過労死として認定することを定めている。(過労死ライン)
この企業においては、賃金体系(役割給)も三六協定(特別条項)も、過労死ラインを超える社内体制を有しており、その結果、前途ある若き青年の命が奪われている。
この過労死の損害賠償事件で大阪高裁は、「責任感のある誠実な経営者であれば自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは自明」として、企業の、更には社長、専務の個人責任も認めている。(大庄・大阪高裁判決「労働者の生命・健康は至高の法益」参照

また、ある建設会社の40代の営業マンが過労死した事件では、彼が営業時常に携帯していた営業日誌には、「毎日10時まで働くくせをつけよ。早く帰ったり遅く帰ったりは家族も困る」と記載されている。

タイムカードがあってもブラック企業である実例を挙げよう。
あるファミリーレストランチェーン店の企業では「稼働計画」(勤務シフト)は絶対であるとの社長通達により、この勤務シフトに基づき出・退勤並びに休憩時間の打刻を社員に強制しており、そのなか25才の店長は心疾患により過労死している。

企業自ら過労死が生じる社内体制を構築している企業は「ブラック企業」との誹りを免れない。

しかし、過労死等はブラック企業のみならず、社会的にも就活においても、大手企業と目されている企業にも生じている。

過労死問題を考えるとき、ブラック企業に注目してしまうと、この問題を矮小化してしまうことになる。
優良企業と目されている大手企業における過労死は、今回の電通事件で社会的な注目を浴びたが、私が担当している事件をみても、多くの大企業において過労死は生じている。
そのキーワードは、「労働時間の適正把握の懈怠」である。社内的に労働者の心身の健康を損ねることのない法令遵守体制がいかに詳細に定められていても、労働時間の適正把握体制が構築されていなければ、過労死等を防止することはできないことは、このブログで何度も強調してきたことだ。

過労死防止は、まず労働時間適正把握体制のチェックから、それなしには優良企業といえども明日は隠れブラック企業との社会的非難、著しい企業価値の失墜を招くことになる。

2016年11月16日 (水)

電通過労自殺事件を考える③

電通では 電通過労自殺事件を考える① のブログで書いたように、平成3年の故大嶋さんの事件では、監理員巡回記録や退館記録、今回の故高橋さんの事件ではIDカードによる入・退館記録があるにも拘らず、自己申告により労働時間を把握していた結果、心身の健康を損ねる長時間労働に対するチェック機能が働かなかったことが、事件が生じた重要な要因となっている。

労働時間の把握につき厚労省の通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」は、原則として使用者の現認あるいはタイムカード、ICカード等の出退勤の客観的な記録に基づき行うことを求めている。

使用者の現認は、小規模な会社で社長が他の社員より先がけて出勤し、全員が退勤したのち社長も退勤するような会社ならともかく、現実的な方法でない。
タイムカード、ICカード、あるいは正確性に欠けるがパソコンのログイン・アウトの記録(ログイン前やログアウト後に業務がなされることもある)等の客観的な出退勤の記録によって把握するのが、厚労省の通達をまつことなく、原則的かつ適正に把握できる方法であることは明白である。

仮に出勤後、退勤までの間に、昼の休憩時間以外に業務から解放された私的な時間があるなら、その時間を自己申告させる、即ち労働時間を自己申告させるのではなく、業務から解放された時間、即ち出勤から退勤までの間に取得した休憩時間を申告させる、電通のように自己申告を原則とするのではなく、出退勤の客観的記録(今回の故高橋さんの事件では入・退館記録)を原則として把握すべきなのだ。
IDカードによる入・退館記録の電磁データがあれば、社員の労働時間を日々把握することは容易であり、時間外労働が36協定の限度時間を超えたらパソコンの画面に黄色の表示、月80時間を超えたら赤い表示がされるようなシステムも容易に作成できよう。
その表示に従って、社員の労働時間の是正と産業医面接等、心身の健康上の措置を行うべきである。

自己申告と客観的な出退勤記録との齟齬は、過労死・過労自殺の温床を生んでいる。

厚労省の前記通達は、例外的に自己申告を認めているが、多くの会社では自己申告を原則としている。また、前記通達は齟齬が生じないための要件を定めているが、その要件を充足した自己申告制度を有している会社は、「優良」会社においても数少ない。
客観的な出退勤の記録に基づく労働時間を原則とすること、電通のような事件が繰り返されないためにも、また不払残業が生じないためにも、使用者には自社の労働時間の把握システムを再検討されることを求めたい。

また、厚労省に対しても、前記通達どおり、適正な労働時間の把握を客観的な出退勤の記録でなすことの厳しい指導を強化することを求めたい。

電通において、再び繰り返された事件を反省してまずなすべきは、自己申告でなく、出・退勤システムに基づく労働時間による把握を直ちに実施することである。

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