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労災認定

2017年2月15日 (水)

過労自殺の労災認定に取り組むにあたってのポイント④
―発病後の出来事でも業務上と評価される場合―

前回のブログ(ポイント③)では、認定基準では発病後の出来事は原則として評価の対象外となることについて述べました。
しかし、認定基準は、例外的に、つぎに述べる「特別な出来事」が認められるときは、発病後の出来事であっても、業務上と判断するとしています。

【心理的負荷が極度のもの】
・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした
(業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)
・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)
・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた
・その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの

【極度の長時間労働】
・発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待ち時間が多い場合等、労働密度が特に低い場合を除く)

また、裁判例のなかには、「特別な出来事」に限らず、認定基準で心理的負荷が「強」と評価される出来事が、発病後であっても認められるときは、業務上と判断するとしたものもあります。
裁判例では認定基準に基づきながらもより広く過労自殺について業務上と判断しているケースがあります。
発病後の出来事であったとしても、あきらめずに、訴訟まで頑張ることが大切です。

更に、発病しているにも拘らず、使用者が長時間労働等過重な業務に従事させたことについて、使用者の注意義務(安全配慮義務)違反を理由に損害賠償請求する道もあります。

詳しくは、お気軽に電話やメールでご相談ください。

過労自殺の労災認定に取り組むにあたってのポイント③
―発病の時期の重要性―

過労自殺の労災(公災)認定を得るためには、被災者がうつ病等の精神障害を発病していることが要件であり、発病が認められなければ「覚悟の自殺」「故意の自殺」として労災の対象外にされてしまいます。

更に、発病が認められても、発病の時期がいつかという点も重要なポイントです。
認定基準は、いじめ・セクハラ等が継続していた場合等を除いて、原則として発病前6ヵ月間の出来事しか評価の対象としていません。
発病したとされた時期以降に強い心理的負荷を生じる出来事(長時間労働、仕事のミス、上司のいじめetc.)があっても、発病後の出来事として評価の対象外とされてしまいます。

発病の時期は、ICD-10に基づくうつ病等の症状が充足されたときとされていますが、本人が亡くなった後においてその時期を特定するのは困難な作業です。
精神科医の協力でその時期を明らかにしようとしても、その前提となる症状(抑うつ感、易疲労感、興味と喜びの喪失etc.)は家族や職場の同僚らの供述が重要です。
自殺する前の症状を細かく思い出して、強い心理的負荷を生じる職場の出来事の後に発病したことを明らかにすることが大切です。
発病の有無のみならず、時期についても、医学的判断以上に症状の事実認定が先行します。

認定基準も発病の時期の特定が困難であることを認めており、そのような事案については出来事後に発病したものと判断するとしています。
発病の蓋然性が認められる強い心理的負荷の出来事の後に、通常は発病が生じる当然の理を述べた定めと言えます。
しかし、被災者にとって発病時期の特定の立証を軽減させる定めであり、活用できましょう。

過労自殺についての発病の話の大切さについては、今後のブログでも触れていこうと思います。

2016年11月30日 (水)

過労自殺の労災認定に取り組むにあたってのポイント②
―発病の有無の重要性―

厚労省等の行政の認定基準は、
 業務による強い心理的負荷 → うつ病等の精神障害の発病 → 自殺
という考え方に立っています。

業務によって直ちに自殺が生じたのではなく、業務によって精神障害を発病し、発病したことにより正常な認識や行為選択能力が著しく阻害されたことによって自殺に至ったことが求められます。

精神障害の発病が認められなくては、「覚悟の自殺」あるいは「故意による自殺」だから、故意による災害は労災の対象にならないとしているのです。
精神障害を発病した下での自殺は、自分の意思による「故意の自殺」ではなく、正常な認識や行為選択能力が失われた下での自殺として、労災の対象となるのです。

ですから、過労自殺の労災認定に取り組むにあたっては、うつ病等の精神障害を発病したことを明らかにすることが重要な第一歩です。

自殺前に精神科医に受診しているときは容易ですが、過労自殺の殆どの事案は自殺前に精神科医の診察を受けないまま自殺に至っています。
では、受診していない場合はどうやって発病を立証したらいいのでしょうか。厚労省は国際的な診断基準である「ICD-10」に基づいて発病を判断するとしています。
「ICD-10」によれば、うつ病については、
 ・易疲労感
 ・抑うつ症状
 ・興味と喜びの喪失

の3つのうつ病の典型症状(少なくも3つのうち2つ)、並びに睡眠障害、焦燥感等一般症状に基づいて発病を判断するとしています。
ですから、被災者が自殺する前の、職場や自宅での様子の変化をひとつひとつ思い起こしていくことが大切です。

しかし、過労自殺で亡くなる方の多くは、職場でも、更には家庭でも、その症状が気づかれないまま、その苦しさを自己統制して最後まで働き続けるなか自殺に至っています。
また、会社はその責任を回避するため意図的に、職場では何の変化もなく、心身の健康状態の悪化はなかったと労基署に報告することも少なくありません。
自宅での細々とした様子の変化、例えば、帰宅したとき今までの「ただいま」の言葉がなくなり疲れた様子だったこと、いつもしていた犬の散歩、子への声かけがなくなった、楽しみにしていたテレビの番組を観なくなった、寝つかれなくなり早朝覚醒が生じていた、いつも追われるような焦燥感を訴えていた、自分を責めるような言動があったetc.を労基署の調査時に述べることが大切です。

様子の変化を、悲しい気持ちを乗り越えて、家族みんなで思い出して、精神障害を発病していたことに足りる症状があったことを明らかにすること。これが自殺の労災認定に向けての、はじめの第一歩です。

発病を明らかにするとともに、大切なのは発病の時期の問題です。
これについては、つぎのブログで。

2016年11月29日 (火)

過労自殺の労災認定に取り組むにあたってのポイント①
―自殺の業務上認定の3つの要件―

大切な方を職場の長時間・過重な業務や、上司・顧客らのパワハラ等で自殺で失った方が、労災(公災)認定に取り組むにあたってのポイントについて、いくつかのブログに分けて述べてみましょう。

厚労省の認定基準は、自殺の業務上外の判断の要件について、
① 精神障害(うつ病等)を発病していたこと
② 発病が、発病前6ヵ月間の業務による強い心理的負荷により生じたこと
③ 業務以外の心理的負荷や個体側(被災者側)の脆弱性によって生じたものではないこと
としています。

③については、人はそれぞれ業務以外の家庭的、経済的、個人的な悩みを抱えているのはあたりまえです。
また、うつ病にかかりやすい性格や、かつてうつ病にかかった病歴をお持ちだったかも知れません。
大切な人が自殺で亡くなったとき、ついそちらに考えがいってしまうかも知れませんが、②の業務による心理的負荷が強いものであることが認められれば、業務以外の心理的負荷や個体側の脆弱性で発病し自殺に至ったことが明白でない限りは、業務上と判断されます。
私が担当した多くの事案のなかでも、②の業務による心理的負荷が強いことが認められた事案で、③により業務上が否定された事案はありません。
逆に、②の業務による強い心理的負荷がないにも拘らず発病したとされた事案では、発病は業務以外の心理的負荷や、個体側の脆弱性のためとされてしまいます。

ですから、認定の要件のうち大切なのは①、②の点で、これが認められれば③の業務以外の心理的負荷や個体側脆弱性は業務上と判断されることの支障は殆どありません。

自殺前に離婚した、借金に追われていた、あるいは、かつてうつ病の病歴があるからだめでしょうかと相談を受けることがありますが、心配する必要はありません。

①と②を明らかにすることができれば、業務上=仕事で自殺に至ったことを認めてもらうことができます。

つぎのブログでは、①の精神障害を発病したこと、並びに発病の時期の重要性について述べることにします。

2016年10月26日 (水)

拡張型心筋症でも過労死と認定される

心筋症や心筋炎でも、従前症状が安定し、日常業務を支障なく遂行できる状態であれば、過労死の認定基準に基づいて判断されることについては、既に「心筋症・心筋炎と過労死の労災認定」で述べた。

拡張型心筋症の基礎疾病を持った外国人労働者が、発症前1か月に160時間の時間外労働に従事するなか「拡張型心筋症、うっ血性心不全」を発症し、埋込型除細動器を装着するに至った事案で、労働保険審査会は、平成26年12月26日、労基署長の下した業務外との判断に基づく不支給処分を取り消すとの裁決を下している。(安全センター情報2016年11月号58頁)

この裁決は、
「本件の如く労働者が脳・心臓疾患に係る基礎疾患を有するものの、日常業務を支障なく遂行できる状態にあったときに、労働に従事していた際、たまたま症状が発現ないし増悪したとしても、一般には業務起因性はないものと考えられている。
しかしながら、業務による明らかな過重負荷によりその自然経過を超えて著しく増悪したと医学的に認めうる場合には、業務との間に相当因果関係が認められるものとして、取り扱うこととされているところである。
そこで、以下に請求人の拡張型心筋症がその自然経過を超えて著しく増悪したか否かについて検討する。」

との基準に基づき判断しているが、この基準は認定基準そのものの立場であることは、前記のブログで述べたとおりだ。

そのうえで、被災者の発症前の時間外労働は、発症前1か月では月160時間を超えるなど認定基準を充足しており、
「したがって、請求人には認定基準の要件に該当する業務による明らかな過重負荷があり、それによって、拡張型心筋症が急激に著しく増悪し重篤な不整脈を発症したものと認められることから、拡張型心筋症の病状の増悪による心室頻拍等の発症と業務との間には、相当因果関係があるものと判断する。」
としている。

労基署長、そして審査官の業務外との判断にへこたれることなく、労働保険審査会で業務上の判断を得たこの外国人労働者、並びにその支援者たちの、ネバーギブアップの精神に敬意を表したい。

一方、拡張型心筋症という問題点(しかし、認定基準上は症状が安定している限り業務上と判断する支障にはならない)があるにしても、これだけの長時間労働が明らかであるにも拘らず、これを業務外とした労基署長、審査官(更に言えば、参与は4人とも棄却相当としている)の判断に対しては猛省を求めたい。

2016年10月24日 (月)

過労死等の労災認定に多くの遺族が踏み切れない理由

かつて、脳・心臓疾患の過労死の労災認定は狭き門だった。あるご遺族は「ラクダが針の穴を通る」より難しいのですね、と嘆いていた。

私が過労死の労災認定事件に取り組むようになったのは35年前、当時の厚労省の認定基準は、発症前の「異常な出来事」(災害に匹敵する出来事)がない限り業務上とされず、過労死という言葉はない時代で、認定率は請求件数のうち3~5%という状況だった。

これに対し現在は、過労死も精神障害・自殺も30%を超える認定率となっている。
未だ救済されない事案が余りに多いものの、認定率は、被災者・遺族が訴訟を通して判例を積み重ねるなか、認定基準を改正させることにより、前進してきている。

にも拘らず、前のブログ(過労死・過労自殺の実際の件数を考える)で述べたように、なぜ、多くの被災者・遺族は労災認定をためらっているのだろうか。その原因を考えてみよう。

1つは、過労死した被災者の過重な労働時間や労働内容が、職場のなかではあたりまえの労働時間になっており、会社は勿論、同僚も、更には家族も、過労死・過労自殺との認識に至らないことが挙げられよう。外からみれば非常識な労働時間が、会社では常識の労働時間となっていることだ。

2つは、周囲の人たちが「善意」で労災認定手続を思いとどまらせることである。大切な人を失い、悲嘆のどん底にいる遺族に対し、家族・親戚も含めて、周囲の人たちが、労災認定という困難な手続をとることを「善意」で引き止めることもある。

3つは、労災認定されたときの補償額についての理解がないことである。
「過労死・過労自殺で業務上と認定(労災認定)されたときの補償額は」のブログで述べたように、労災認定されれば、厚生・基礎年金の遺族年金とあわせて労災の遺族補償年金が支給され、その額は、一家の大黒柱が亡くなる前とさして遜色のない額となる。

2016年10月21日 (金)

過労死・過労自殺の実際の件数を考える

平成27年度の脳・心臓疾患の過労死(死亡事案)の労災認定件数は96件、過労自殺(自殺未遂含む)は93件となっている。
しかし、この認定件数は、日本の過労死・過労自殺の実態を反映したものになっていない。

厚労省の平成22年度の人口動態調査によれば、60才未満の就業者の脳・心臓疾患での死亡者数は約9000人、一方、平成25年労働力調査によれば、週間就業時間35時間以上の雇用者のうち、月末1週間の労働時間が60時間を超える者は、男性は15%、女性は5%となっており、男性の雇用者数の方が多いことを考えると10数%となる。
このような統計結果から推測すると、過労死(死亡事案)は1000件を下まわることはあるまい。過労死(死亡事案)の認定件数は前記のとおり、平成27年度では96件であり、推定される過労死の件数の10分の1にも満たない。

また、警察庁による平成27年の自殺者の原因・動機詳細別の調査結果によれば、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者数(死亡)は2159件となっている。これに対し、過労自殺と認定された件数は前記のとおり93件に留まっている。

過労死・過労自殺と労災認定された事案の件数は、実際の推定件数と比較すると氷山の一角に過ぎない。

次のブログでは、なぜ、多くの遺族が、過労死・過労自殺の労災認定に踏み出さず、ましてや企業責任の追及の損害賠償請求に至らないままになっているのかを考えてみよう。

2016年7月13日 (水)

道路貨物運送業の過労死の認定率の高さの背景にあるもの

平成27年度の脳・心臓疾患の労災補償状況が、厚労省により発表された。
過去5年間の補償状況はつぎのとおりである。

          H23年度  H24年度  H25年度  H26年度  H27年度
決定件数     718      741      683       637      671
支給決定件数  310      338      306       277      251
認定率      43.2%   45.6%    44.8%   43.5%    37.4%

決定件数、支給決定件数ともほぼ横ばい、あるいは漸減しているのが気がかりである。
未だ認定請求されないままとなっている多くの過労死があるのではないか。
認定基準の下で、発症前6ヵ月間の時間外労働のみを評価し、業務の質的過重性に立ち入った判断がなされていないのではないか。

業種別にみると、道路貨物運送業の請求件数が133件、支給決定件数が82件であり、認定率が62%と、他の業種と比較して突出している。貨物運送業の運転手の過重な長時間労働がその背景にあることは確かだ。
国の定めた「改善基準」さえ、拘束時間が月320時間まで認められるものとなっている。
過労死防止のためには「改善基準」を、真に貨物運送運転手の労働条件を改善する内容に是正することは急務だ。

道路貨物運送業の認定率が高い理由として、タコグラフや運転日報等労働時間を適正に把握するための文書の作成が、貨物自動車運送事業法等の法律で義務づけられていることだ。これらの文書により、実態としての労働時間が、他の業種と比べて適正に把握できることが認定率の高さに反映していると言えよう。

なんとかの1つ覚えのように言うようだが、労働時間の適正把握こそが、過労死予防の最優先の課題であり、過労死の労災認定のためにも不可欠であることを、道路貨物運送業の認定率の高さは物語っている。

2016年6月24日 (金)

心筋炎・心筋症と過労死の労災認定

心筋症や心筋炎等、先天性の心疾患を持病として持ちながら、過重な長時間労働に従事するなか、死亡したり、重い後遺障害を残した方についての労災認定や損害賠償の相談も少なくありません。

心筋症等の先天性心疾患と業務との相当因果関係については、認定基準は、「旧認定基準では、『先天性心疾患等(高血圧性心疾患、心筋症、心筋炎等を含む。)を有していても、その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合であって、業務による明らかな過重負荷によって急激に著しく重篤な状態に至ったと認められる場合には、業務と発症との関連が認められる。』として取り扱ってきたところである。認定基準では、先天性心疾患等に関する考え方は明記されていないが、旧認定基準における取扱いを変更するものではない。」としています。

ですから、心筋症等の先天性心疾患等を被災者が有していたとしても、「その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合」は、認定基準の定める業務による過重負荷(発症前1ヵ月間におおむね100時間、又は発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間の時間外労働)が認められる場合は、業務が相対的に有力な原因となって発症したものとして業務上と判断されることになります。

心筋症や心筋炎の持病があると、長時間労働があっても持病のせいと考えがちですが、それまでの長時間労働でも支障なく勤務していたのであれば、「病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合」です。

労災認定や会社の責任の追及に取り組んで下さい。

2016年6月 3日 (金)

海外赴任中の過労死等の労働災害の労災補償は?

海外赴任中に過労死等の労働災害が生じたとき、労災保険の海外派遣者の特別加入制度に加入していなくても労災補償を受けることができるのでしょうか。

厚労省の通達によれば、本社・支店等、日本の事業場から海外子会社等に派遣された場合、日本の事業場からの業務についての指揮命令に基づき勤務を行っている場合は、特別加入手続なしに日本の労災保険が適用され、海外子会社等の指揮の下で勤務を行っている場合は、特別加入手続をしないと労災保険の適用はないとしています。即ち、業務についての指揮命令の実態等に基づき総合的に判断すべしとしています。(昭和52年3月30日基発第192号)
数年に亘る長期間の派遣でも、本社・支店等、日本の事業場からの指揮命令下で業務を行っている等の実態があれば、特別加入することなしに日本の労災補償を受けられるのが原則です。

しかし、労基署では、海外出張と海外出向とを分けて、海外出張は特別加入なしでも労災補償を受けられるが、海外出向(子会社に籍を置く場合)は特別加入しないと労災補償は受けられないと説明されることが多いのではないでしょうか。

この点につき、中小運送会社の東京営業所に勤務していた社員が、営業所に在籍して中国の子会社に長期間に亘って出向中過労死した事件につき、東京高裁は本年4月27日、出向中も東京営業所の指揮命令の下で業務を行っていた実態に基づき、特別加入していなくとも労災補償を受けられるとの判決を下しました。

海外派遣先での業務についての指揮命令の実態が重要ですが、その実態は海外派遣者の業務内容により様々であり、労基署の判断も必ずしも厚労省の通達に沿ったものとは言えないことも少なくありません。
前記の東京高裁の事案も、労基署や地裁では、特別加入していなかったとして、労災補償の対象にはならないとされていました。海外滞在期間が長期間か、子会社に出向したのか、など外形上で特別加入の要否を説明することも少なくないようです。

特別加入するかどうか判断に苦慮するケースについては、特別加入するのが海外派遣者の労災補償による保護のためには必要だと思います。
また、特別加入による労災補償(給付基礎日額を決めて加入します)より、通常の労災補償の額の方が上まわることがありますので(特に過労死のように不払残業代があり、それが給付基礎日額に反映されていないとき)、そのときは特別加入していても、通常の労災補償としての請求をすることも考えて下さい。

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                                〔日本経済新聞2016年5月31日〕

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