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労災認定

2020年5月25日 (月)

新型コロナの労災認定についての厚労省の通達(令和2年4月28日)とその問題点

1 新型コロナの感染経過を明らかにすることの困難さ
新型コロナの感染で健康を損ね、休業や、不幸にも亡くなったとき、それが業務上と認められ労災補償の対象になるかどうかについて考えてみましょう。
業務上と認められるためには、被災者が業務により発症したことの因果関係を明らかにすることが求められます。
しかし、目にみえず、どこにでも存在する可能性のあるコロナウイルスに業務中感染したのか、私生活の中で感染したのかを被災者が明らかにするのは困難であることは言うまでもありません。

 

2 認定を緩和した厚労省の通達
労災認定にあたる厚労省もこの点を考慮したうえ、つぎのような通達で定めた基準で判断するとしています(令和2年4月28日基補発0428第1号)。

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3 通達の内容
(1)医療介護従事者の場合
この基準によれば、医療従事者の場合は業務外で感染したことが明らかでない限り業務上と認められ、既にそのような判断で業務上と認められたケースがあります。
(2)感染リスクの高い業務の従事者の場合
医療従事者以外でも、感染者が確認された職場や、感染リスクの高いスーパーや飲食店、宅配業等、不特定多数の顧客と接触する業務の従事者についても「個々の事案に即して」との条件はありますが、医療従事者と同様に原則として業務上とされることになるでしょう。
(3)他の業務の従事者の場合
これ以外の事務職や工事作業等の業務の従事者についてはどうでしょうか。
被災者が感染したのが業務中や通勤途上(通勤途上でも労災の対象になります)なのか、立証するのは困難です。
厚労省の作成したQ&Aでは、「他の業務でも、感染リスクが高いと考えられる労働環境下の業務に従事していた場合には、潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査し、個別に業務との関連性(業務起因性)を判断します。」としています。
目にみえず、どこにでも存在するコロナウイルスの感染経過を明らかにすることは困難であるという特殊性を考えると、業務外で感染したことが明らかでない限り、業務上としてその補償の対象と考えるのが相当だと考えます。

 

2020年5月 1日 (金)

新型コロナウイルス感染症についての厚生労働省の通達

1 厚労省のコロナ感染と労災についての通達
コロナ感染と労災について、厚労省は令和2年2月3日付けで、下記のとおり「新型コロナウイルス感染症にかかる労災補償業務の留意点について」との労働基準局補償課長の通達を発している。

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2 海外出張
しかし、海外出張中の感染による発症については、「出張行程全般にあり、業務遂行性がある」ことを考えるなら、コロナウイルスが流行している地域への海外出張中に感染が生じたならば、業務中は当然、私的な飲食中等やホテル内で感染した場合も含めて業務上と認定されるべきだ。
業務中に感染したか、私的行為中に感染したかの立証は不可能に近い。
また、私的行為中であったとしても、感染は、流行している地域への海外出張に内在した危険である。

3 国内での勤務
国内での感染による発症については、医療関係者は勿論、出勤を余儀なくされる、コロナ感染のリスクのあるすべての業種が労災の判断の対象になる。
この通達は業務上との判断をするにあたり、「業務又は通勤における感染機会や感染経路が明確に特定され」「業務以外の感染源や感染機会が認められない」ことを求めている。
ウイルスに感染した機会や経路を明確に特定することを被災者側に求めることは、不可能を強いることになる。
ウイルスへの感染という、業務や通勤での内在危険は、感染者でも無症状の者が多いなど、目に見えず、被災者自身も認識できない。
前回のブログに述べたように、業務以外の私的行為中に感染したことが明らかにならない限り、業務上と判断するのが相当である。

4 厚労省も労災認定の要件を緩和するとの報道
既に前回ブログで述べたように、新聞報道によれば、厚労省もコロナウイルス感染による業務上外等の判断にあたっては、柔軟に対応するとしている。
この通達にある「業務又は通勤における感染機会や感染経路が明確に特定され」なくとも、個々の事業について業務・通勤状況、感染と発症との医学的相当性、私的感染の可能性等を総合的に考慮して業務上と判断するということであろう。
未だ、労災請求件数は全国的にも少数に留まっているが、コロナ感染の被災者が労災認定されることは、高い感染リスクの下での過酷な勤務に立ち向かっている医療関係者にとっての力添えになろう。

2020年4月24日 (金)

新型コロナ感染の労災認定についての厚労省の方針

新型コロナ感染による健康障害や死亡についての労災適用にとって壁となるのは、職場での同僚らからの感染(業務上災害)、あるいは通勤途上の公共交通機関の利用者からの感染(通勤途上災害)にしても、家庭や私生活ではなく、職場や交通機関で感染したことの立証が問題になる。
新聞報道(4月24日毎日朝刊)によると、コロナ労災についての労災認定にあたっては、職場や公共交通機関での感染ルートを厳格に特定できなくても、柔軟に解釈して労災認定する方針を固めたとしている。
業務や通勤での内在危険であるコロナ感染者の存在は、無症状の者も多く、PCR検査も限定してしか実施されていないため、感染ルートの立証による業務(通勤)起因性の立証は困難を極める。
その立証を緩和し、労災として認定するのは、どこに存在するか、どこで感染したかは目にみえず、医学的にも特定できないコロナ感染のルート特定の困難さを考えると、厚労省の方針は当然と言えよう。
業務やそのための通勤をしていた時期と、感染が推定される時期との間に関連性が認められ、私生活において感染した等、業務や通勤以外により感染した等、業務や通勤以外の確たる他原因によって発症したことが明らかでない限り認定すべきである。
新聞報道では、既に中国人観光客を案内したツアー関係者や、陽性患者を看護していた看護師から労災請求が3件なされているとのことである。
医療関係者らのリスクの下での献身的な勤務に応えるためにも、広い救済が求められる。

 

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2020年4月21日 (火)

新型コロナウイルス感染と労災認定

1 新型コロナウイルス感染が労災となる場合
新型コロナウイルス感染が、世界的なパンデミックの状況となり、日本でも爆発的感染の瀬戸際の状況が続いている。
感染により健康を損ねたり、不幸にも死亡に至った場合の労災認定の問題について考えてみよう。
労災保険で業務上と認められ、労災保険の補償の対象となるキーワードは、「業務内在危険の現実化」である。
労働者が従事している業務そのものに感染リスクが内在しており、その結果現実に感染が生じ、肺炎更には死亡に至ったという関係が認められるか否かである。
3つの類型が考えられる。

2 病院等の職員の感染
第1は、病院の医師、看護師等、感染した患者と直接接触する労働者についてである。
病院の職員は感染した、あるいはその疑いのある患者の治療にあたっている。
感染の危険は内在するどころか、現実に直面している最前線の現場だ。
患者の治療のなかで感染すれば、病院での業務に内在した危険が現実化した結果であり、業務上と認められる。
労災の実務では、
「・病院または診療所において患者の分泌物または排泄物等を介して感染したウイルス性肝炎等の伝染性疾患あるいは伝染性疾患ではなくても病原菌にさらされる業務(炊事婦、介助人等)に従事したことにより起きた細菌性中毒等の疾病
・介護施設において入所者、施設利用者等を介して又は訪問介護の利用者を介して感染した疥癬等の疾病」
とされており、労災補償の対象となる。

3 事業場での業務による感染
第2は、会社の社員が感染者であったため、他の社員が社内感染をした場合だ。
事務所、工場等、三密を回避できない事業場で、社内に感染者が生じている状況があれば、他の社員にとっては、事業場での就労環境に感染の内在危険のある現場である。
労災の実務では、
「・出張先(海外を含む。以下本節において同じ。)又は海外派遣先(海外派遣者特別加入対象者に限る。)において感染した伝染性疾患(いわゆる「風土病」を含む。)
・事業主が給した食物(給食、間食等)による食中毒」
は業務上とされているが、日本国内においても感染症がまん延している状況下では、職場での勤務そのものに感染の内在危険があり、業務上と判断される可能性がある。
そこで現実に感染が生じれば、業務内在危険が現実化したと評価できよう。

4 通勤時の混雑した公共交通機関での感染
第3は、通勤のため混雑した電車・バス等公共交通機関で感染した場合だ。
感染者が急増するなかでは、公共交通機関による通勤には高い感染リスクが内在している。
通勤にともなう内在危険が現実化したものとして、通勤災害として労災補償の対象と考えることができるのではないだろうか。

5 新型コロナと労災を関連づけて考えてみよう
現在は、感染の広がりを国・自治体の責任と国民一人一人の自覚でくいとめることが課題だ。
しかし、この問題と労災と関連づけて考えることも大切だと考える。

2019年9月26日 (木)

大阪労働局アークの問題点

1 大阪労働局でのアークの設置
 大阪労働局の労災補償課のなかに高度労災補償調査センター(略してアーク)が本年4月から設置されたのを知っていますか。
 大阪府下の各労基署の労災補償課で担当していた、脳・心臓疾患、精神疾患・自殺、石綿の三つの疾患の案件について、アークが担当し、調査する体制になっています。
 これら案件については、労基署で受け付けるものの、業務上外の調査は全てアークが行い、業務上外についての調査を終えると再び労基署に戻し、労基署長の名で支給・不支給決定を下すことになりました。

2 効率的かつ迅速な手続との設置目的
 労基署の労災補償課の人員削減の下で、これら高度な判断が必要な困難案件につき効率的かつ迅速な手続を実現するというのが設置の目的とのこと。確かに労基署のこれら案件を担当する方が、多くの電話や窓口相談等に対応しながら事件処理をするご苦労は理解できます。
 しかし、つぎのような心配もあります。

3 充分な調査に基づく適切な救済が図れるのか
 人員不足の下で効率的・迅速な対応をするためには人員増をするのがまずやるべきこと。人員増なしに効率性・迅速性が求められる体制をつくることは、充分な調査を行ったうえでの適切な業務上外の判断となり得るのか。
 とりわけ、最近の厚労省の脳・心臓、精神・自殺案件における労働時間は、労基法32条の労働時間と同義であるとの審議官通達等の動向からして、労働時間の算定において画一的な処理がされるおそれはないのか、しっかり見守ることが大切だと思います。

4 過労死等事案を通じての職員の労働現場への「魂」と「スキル」が失われないか
 また、労基署の職員全体の労働現場に対する認識という点からしても、過労死・過労自殺等の事案を担当することは、その実態と調査のスキルを学ぶ重要なことです。
 アークの体制となることで、労基署での調査は空洞化してなくなり、アークの担当者のみが専門的にこれら案件を担当することになれば、多くの職員がこれら案件を担当する機会が失われてしまうのではないか。

5 労基署の労災と監督の連携による過労死防止に支障が生じないか
 過労死・過労自殺を防止するには、労災部署で業務上外を判断するなかで明らかになる長時間労働の実態・原因を、監督部署で是正、指導、更に摘発することが大切です。
 労基署による労災認定と監督・指導は、過労死等を防止するための車の両輪とも言えます。

 アークの動向には、私たちはこの3つの視点から注目していきましょう。

2019年9月20日 (金)

ミナミのホストクラブのホストの急性アルコール中毒死についての業務上の判決(大阪地裁令和元年5月29日判決)

1 ミナミのホストの急性アルコール中毒死
 本件の被災者(死亡時21才)は、通信制高校に在籍しながら、平成24年4月頃からミナミのホストクラブ「ブラックパール」においてホストとして勤務していた。被災者は、ネタや面白いことを言って客の気を引くいわゆるお笑い系のホストだった。
 被災者は平成24年8月1日早朝より、クラブで先輩ホストに強要されてテキーラゴールドを飲酒した後、体調に異変を生じ、同日午前8時34分、大阪赤十字病院に救急搬送されたが、急性アルコール中毒により死亡した。
 本件訴訟は、この死亡についての業務上外が争われた事案である。

2 先輩ホストによるテキーラゴールドの飲酒の強要
 被災者は先輩(主任)のホストであるAらと共に女性客の接客をしていたが、Aは、女性客に新たなボトルの注文を呼び込むため、アルコール度の高い新品のテキーラゴールドを持ち出し、Aは被災者に対しコップに注いで何度も一気飲みを強要した。

3 労基署長の業務外の判断
 被災者のアルコール中毒死が業務内在危険の現実化と評価されるか否かが争点であるが、大阪中央労基署長は、ホストの業務は、接客及び接待をすることであり、大量の飲酒をすることではない。そして、①本件クラブにおいては、ホストに対し、酒に酔わないよう厳しく教育指導されていたこと、②被災者をはじめとするホストらが連日のように過度の飲酒を余儀なくされていたといった事実も、本件事故当日に他のホストや顧客が被災者に大量の飲酒を強要した事実もなく、業務による大量飲酒の必要性はなかったこと、③被災者は、本件クラブによる指示に違反し、自己の判断で、生命に危険が及ぶほどの大量の飲酒に及んだ可能性が高いことからすると、被災者が大量に飲酒に及んで急性アルコール中毒を発症したことは、ホストの業務に内在する危険が現実化したものとはいえないとして業務外とした。

4 ホストの業務内在危険として業務上とした判決
 これに対し判決は、飲酒強要の態様がエスカレートし、歯止めがかからない状況になっていたとしても、この点をもって、本件クラブにおける接客業務であることが全く否定されるということにはならないというべきであり、本件事故当日における先輩ホストによる飲酒強要及び被災者の多量の飲酒は、客観的かつ全体的にみて、本件クラブにおけるホストとしての業務に関連ないし付随して生じた事態であったと認めるのが相当である。被災者の死亡の原因となった急性アルコール中毒は、客観的にみて、本件クラブにおけるホストとしての業務に内在又は通常随伴する危険が現実化したことによるものと評価することができるとして、業務起因性を認めた。

5 ホストの業務の実態を踏まえた判決
 ホスト、ホステス等は勤務のなかで、過度の飲酒を客や先輩・上司から余儀なくされたり強要されることは少なくない。また、それが店の営業成績につながり、店としても業務の一環として容認していると言えよう。この店でも「ホストらが接客業務中に多量の飲酒をするような営業が度々行われ、これが事実上黙認されている実態にあり、本件クラブのホストは、通常の接客業務においても、大量飲酒によって、記憶がなくなる等の状態にしばしば陥っていた」事実が認められている。客と飲酒することが業務に当然随伴するホストクラブ等の業務においては、ホストらが過度の飲酒の結果、急性アルコール中毒に至ったからと言って直ちに業務から逸脱したことにはならず、業務に内在する危険が現実化したものとして、業務上と判断したこの判決は、飲酒が業務と密接不可分であるこれら業務の実態を踏まえるなら当然の判決と言えよう。
 ホスト、ホステスとして勤務する労働者の業務に関連する飲酒から生じた危害は、自己責任により生じたものではなく、業務上として労災保険による救済の対象となることを考えるにつき参考となる判決である。
 なお、この事件については、このホストクラブを経営する会社の損害賠償責任を認める判決も下されている。(大阪地裁平成31年2月26日判決)

2018年6月27日 (水)

過労死認定についての二重就労者の勤務の不当な厚労省の取扱いの是正を

昼と夜の複数の職場での仕事をかけもちで生活を支えている非正規就業の若者が少なくない。
その若者が、過労死・過労自殺したとき、国(厚生労働省)は労働時間を算定するにあたっては、主たる職場での労働時間のみしか過重性を評価しないとしている。

例えば、脳・心臓疾患を発症前の、
 A職場の労働時間 月200時間
 B職場の労働時間 月100時間
のとき、A・B職場の労働時間を合算すれば月300時間となり、時間外労働は月100時間を超え、過労死と認定されることになる。

しかし、国はA職場の月200時間しか評価しないから、過労死と認められないとしている。
労災保険法は、労基法の災害補償制度を保険化した制度だから、個々の事業主(使用者)毎に過重性を評価するとしているのだ。

また、A職場の労働時間のみで過労死として認定されても、それに対する労災保険の遺族補償年金の額は、A職場での賃金のみで算定される取扱いとなっている。
非正規就業の若者の兼業・副業のみならず、正社員についても兼業・副業を認めようとする動き(参照)があるなか、このような過労死等の労災認定、並びに補償額についての取扱いは直ちに是正されなくてはならない。
私も、勤務医が関連病院で兼業としてアルバイト勤務するなかで過労で倒れた事件を担当している。

実は、平成20年までは、厚労省も複数の事業場で勤務している労働者が過労死したときには、複数事業場の労働時間を通算して業務上外の判断をし、補償額も複数事業場での賃金を合算して算定していたことは、つぎの「事務連絡」からも明らかだ。

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新聞報道(朝日本年6月23日朝刊)によれば、労働政策審議会でこの点についての議論を始めたとのことであるが、早期にかつての取扱いに戻すべきである。

2018年3月16日 (金)

近畿財務局職員の自殺についての公務起因性の検討

近畿財務局の、森友学園の文書改ざんに関与を余儀なくさせられたと考えられる、上席国有財産管理官が自殺したとの報道がされている。
真面目、誠実に国民のために国有財産管理の職務を行う職員であれば、政治のトップ層からの指示の下で、この文書改ざんに関与をさせられていたとしたら、「常識が壊れてしまい」「このままでは一人で責任をとらされる」とも述べていたという自殺に至るまでの、苦悩に満ちたであろう心中を察するに、無念の一言に尽きる。
この問題の政治的な論点は措いて、マスコミの報道に基づいて、この職員の自殺について国家公務員災害補償法で公務上と認められる死であるか考えてみたい。

精神障害・自殺についての業務上(公務上)判断の行政内部の基準となる認定基準は、民間労働者の労災については厚労省、地方公務員については地方公務員災害補償基金、国家公務員については人事院が、それぞれ通達で定めている。
いずれも同じ精神医学的知見に基づき定められており、その表現は異なるものの、内容的には同一性を有する基準だ。

自殺については、業務による強い心理的負荷でうつ病等精神障害を発病した下でなされたときは、正常な認識や行為選択能力が著しく阻害された下でなされた(本人の故意によるものではない)として、業務上となる。
問題は、精神障害を発病するに足りる業務による強い心理的負荷の立証だ。

人事院の認定基準は、

困難な対外折衝等を行った
・その成否が国民生活等に大きな影響を及ぼす対外的な折衝に責任者として対応し精神的緊張を強いられた場合
・立場の異なる関係団体、府省等との間に立って一定の方向性を打ち出すための説得、調整の作業に従事した場合
・大型公共事業プロジェクトの執行に関し、利害の異なる関係者間の調整が難航するなど困難な事態に直面することとなった場合
社会問題化した事案に対応した
・高度な調査技術が必要とされる違法行為の摘発などの業務に従事し、関係者と軋轢を生じる厳しい対応にあった場合」

の出来事を「発症原因とするに足りる強度の精神的又は肉体的負荷がある業務があったと認められる」事由として評価するとしている。
森友学園に係る決裁文書の作成や、虚偽文書の作成に関与を余儀なくされている事実が認められれば、強い心理的負荷があったものとして公務上と当然認められよう。
また、人事院の認定基準は、
特に、発症前6か月間に、1か月間におおむね80時間以上の超過勤務を行っていた実態がある場合には、その実態の具体的把握を含め、発症までの間の勤務に関する負荷の過重性の分析を十分に行うことが必要であるため、調査を慎重に行うこととしている。
前記の業務に加えて「1か月間におおむね80時間以上の超過勤務」(月100時間を超える時間外勤務があったと報道されている)が重複していれば、その総合評価として公務上と認められることはより明白と言えよう。

厚労省の認定基準で検討すると、公務上であることは、より分かりやすい。
業務に関連し、違法行為を強要された出来事があり、その出来事が、
・業務に関連し、重大な違法行為(人の生命に係わる違法行為、発覚した場合に会社の信用を著しく傷つける違法行為)を命じられた
・業務に関連し、反対したにもかかわらず、違法行為を執拗に命じられ、やむなくそれに従った
・業務に関連し、重大な違法行為を命じられ、何度もそれに従った
・業務に関連し、強要された違法行為が発覚し、事後対応に多大な労力を費やした(重いペナルティを課された等を含む)

のいずれかに該当するときは、心理的負荷は「強」と評価され、業務上と判断される。
この出来事が仮に「中」程度のものとされても(そのように低く評価されることは考え難いが)、月100時間を超える時間外労働が認められれば、前記の出来事とこの長時間労働との総合評価により「強」と評価され、業務上と認められる。

ご遺族が公務上の認定請求手続を行うことは、違法行為の事実と、それを職員に強要した事実を解明することによって、亡くなった職員の名誉、尊厳を守るとともに、ご遺族には手厚い公務災害補償がなされることになる。
更に、真摯に国の財務行政に従事した職員の命を、国が安全配慮義務を怠ったため奪ったことに対する国家賠償責任も当然生じよう。

2017年9月 4日 (月)

過労死事件でのグーグルマップ
タイムライン活用法

過労死・過労自殺事件の多くは、被災者の長時間労働の立証が業務上外のカギを握っている。
厚労省は通達(ガイドライン)で、タイムカード、ICカード等の客観的な出退勤の記録に基づく労働時間の把握を使用者に求めている。しかし、未だに実態と齟齬の著しい自己申告での把握がなされていることは、電通の高橋まつりさんの過労自殺でも明らかだ。
警備記録の解除(出勤)、セット(退勤)の記録、パソコンのログイン・ログアウトや交通ICカード、ETCの記録等によって、そしてこれらの記録のないとき(そのような事案が多い)は、同僚らの供述を聴取して、実態としての労働時間を立証することが、この事件に取り組む弁護士の労力の7~8割を占める。
労働時間の実態を明らかにする手段として、スマホの位置情報をオンにしておけば、グーグルマップのタイムラインの社内や店舗での滞在時間のデータを得ることが出来る。
このデータは、離婚事件の慰謝料請求や未払残業代の請求事件でも使われていると聞いているが、過労死等の事件にとっても、実態としての労働時間を明らかにする資料となる。
被災者がスマホを常時携帯している事案では、グーグルマップのタイムラインの記録があるかどうか確認してはいかがでしょうか。

2017年2月15日 (水)

過労自殺の労災認定に取り組むにあたってのポイント④
―発病後の出来事でも業務上と評価される場合―

前回のブログ(ポイント③)では、認定基準では発病後の出来事は原則として評価の対象外となることについて述べました。
しかし、認定基準は、例外的に、つぎに述べる「特別な出来事」が認められるときは、発病後の出来事であっても、業務上と判断するとしています。

【心理的負荷が極度のもの】
・生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした
(業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)
・業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた(故意によるものを除く)
・強姦や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシュアルハラスメントを受けた
・その他、上記に準ずる程度の心理的負荷が極度と認められるもの

【極度の長時間労働】
・発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待ち時間が多い場合等、労働密度が特に低い場合を除く)

また、裁判例のなかには、「特別な出来事」に限らず、認定基準で心理的負荷が「強」と評価される出来事が、発病後であっても認められるときは、業務上と判断するとしたものもあります。
裁判例では認定基準に基づきながらもより広く過労自殺について業務上と判断しているケースがあります。
発病後の出来事であったとしても、あきらめずに、訴訟まで頑張ることが大切です。

更に、発病しているにも拘らず、使用者が長時間労働等過重な業務に従事させたことについて、使用者の注意義務(安全配慮義務)違反を理由に損害賠償請求する道もあります。

詳しくは、お気軽に電話やメールでご相談ください。

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