非現業公務員(市役所、県庁等の職員)の勤務時間適正把握懈怠の下での過労自殺
私が事件を担当するなかで、労働時間の適正把握につき最も立ち遅れていると考える職種は、非現業の地方公務員(市役所、県庁等勤務の職員)である。出退勤時刻をIDカード等で把握しうるにも拘らず、過少な自己申告により勤務時間を算定するなかで地方公務員の過労自殺が生じている。
地方公務員の時間外労働は労基法33条3項(公務のため臨時の必要があるとき)に基づいてなされており、勤務時間についての規範意識が希薄な現場が少なくない。しかし、非現業の地方公務員の時間外労働の多くは「臨時の必要があるとき」に生じているのではなく、恒常的に生じている。地方公務員法は労基法36条を適用除外しておらず、これら地方公務員についても36協定を締結させ、かつIDカード等出退勤の客観的記録により労働時間を適正に把握するべきものと考える。
地方公務員の過労死等の事件を担当するなかで実感するのは、長時間勤務についての監督機関は人事委員会のある地方公共団体では人事委員会又はその委員となっている。しかし、多くは人事委員会を置かず公平委員会が設置されており、その場合は地方公共団体の長が民間における労基署長の職権を行うとされている(地方公務員法58条5項)。
勤務時間等の服務権限とそれに対する監督権限が市長等の地方公共団体の長が併有しており、長時間勤務に対する不払給与が生じても罰則はない。
このような服務・監督権限を長が併有することに対する法改正なしには、非現業の地方公務員の勤務時間の適正把握は望み難い。
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