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« なぜ、私は教員の過労死等の損害賠償事件に取り組むのか | トップページ | 甲府市職員の過労自殺についての甲府地裁の原告勝訴判決 (令和6年10月22日) »

2024年8月28日 (水)

東大阪市立中学教員事件の判決から考える長時間勤務者の産業医面接制度

東大阪市立中学教員の長時間勤務による適応障害発病についての損害賠償請求事件の大阪地裁判決が、被告の東大阪市、大阪府の控訴することなく確定した。

 

この事件の審理のなかで、東大阪市教育委員会が作成していた月80時間を超える時間外勤務に従事していた東大阪市立の学校園の教員の一覧表の一部が提出された。

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原告となった教員以上に長時間勤務に従事している教員がいることが明らかになった。
文科省の通達(平成31年2月12日「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法の解釈等について(通知)」)は、単月で100時間、複数月で月平均80時間(過労死ライン)を超えた教員については、本人の申出の有無を問わず、長時間勤務者の産業医面接の対象とすることを求めている。

 

しかし、その対象となる過労死ラインを超える教員は毎月多数に及んでいるのに、4月から10月までの7ヵ月間に長時間勤務者として面接を受けた教員は、自ら面接を申し出た数名に留まっていた。

 

訴訟のなかで、原告は東大阪市教育委員会の産業医面接の指導要綱を文科省の通達に沿って、過労死ラインを超えた教員については、産業医面接する内容に改訂することを和解の場で求めた。しかし、東大阪市はこの提案を一蹴したため判決に至っている。

 

心身の健康を損ねるおそれのある過労死ラインを超えて長時間勤務に従事している教員は、前記の一覧表のように多数いるにも拘らず、東大阪市に限らず多くの自治体の教育委員会が作成している長時間勤務者の産業医面接についての要綱等は、文科省通達に反して本人の申出を面接の要件としている。

 

教育現場では、日本の高度な教育が壊れるか、その教育を支える教員の心身の健康が壊れるかの二律背反の状況が生じていると言われるようになって久しい。
教員の心身の健康を守る最後の防波堤とも言える産業医面接を、文科省通達に即したものにすることの重要性を、この東大阪市立中学の教員の国家賠償請求事件のなかでも痛感した。

 

なお、地方公務員全体についても、総務省通達(総行安第3号平成31年2月1日)により、過労死ラインを超えた公務員については、本人の申出なしに面接することを定めている。
一方、原則として全ての労働者に適用される労働安全衛生法66条の8並びにそれに基づく規則は、過労死ラインを超えた労働者については本人の申出を要件としている。(文科省、総務省通達は、国家公務員についての人事院の規定にあわせて、申出なくとも実施するとし、その要件を緩和している。)
労働安全衛生法のこの条項の改正を見据える必要があろう。

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