近畿財務局職員だった赤木俊夫さんの自殺と、残された「国家公務員倫理カード」
近畿財務局に勤務していた赤木俊夫さんの手帳の平成29年2月26日(日)の欄には、「統括から連絡を受け出勤 本省からの指示」と記載されている。
この日から、俊夫さんの森友問題に関する決裁文書の改ざんについての「抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか」(俊夫さんの手記)との精神的苦悩が始まり、自殺という悲劇に至っている。
今、赤木さんの自殺についての国と佐川元理財局長を被告とする国家賠償請求訴訟の代理人として、生越照幸弁護士とともに関与している。
代理人になる前に俊夫さんの自殺を報道で知ったとき、厚労省の精神障害・自殺の労災認定基準で、心理的負荷が「強」(業務上と認められる)と評価される出来事が頭に浮かんだ。
「業務に関連し、反対したにもかかわらず、違法行為を執拗に命じられ、やむなくそれに従った」
俊夫さんが違法な文書改ざんを命じれられたときの状況は、認定基準が定めるこの出来事そのものだった。
俊夫さんは、平成29年の手帳のホルダーに、何年も手帳に入れたためかすり切れた「国家公務員倫理カード」を大切にはさみこんでいた。
また、「僕の契約相手は国民です」と生前常々語っていた俊夫さんにとって、決裁文書の改ざんという違法行為に手を染めることの苦悩はいかばかりであったか。
訴訟では、俊夫さんが文書改ざんの証として作成していた「赤木ファイル」についての文書提出命令が争われている。
「赤木ファイル」は、俊夫さんの「抵抗したとはいえ関わった者」としての責任感と良心が集約されているのではないか。
俊夫さんが大切にしていた「国家公務員倫理カード」には、「利害関係者との間では、酒食等のもてなしなど、供応接待を受けること」は禁止されていることが明記されている。
総務省では、この国家公務員倫理規程に幹部ら11名が懲戒や訓告等の処分を受ける事態が生じている。
俊夫さんの自殺についての訴訟は、決裁文書改ざんの事実解明とともに、国家公務員としての国民への責任のあり方を問う訴訟でもある。
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