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2021年1月27日 (水)

大学院生の無給医に対する中央労基署長の是正勧告 ―鳥取大学医学部附属病院の無給医の過労運転事故から考える

全国の大学付属病院の大学院生の医師は、一般の勤務医と同様、外来・病棟・手術等の診療行為に従事しているが、それに対する賃金は支払われず、無給医と呼ばれている。
日本医科大学付属病院(東京都文京区所在)の大学院生の医師が、診療業務に従事しているのに賃金が支払われないことについて、中央労基署長に労基法違反として申告した件について、代理人として関与してきた。
令和元年12月に申告がなされて1年余り経過した本年1月20日に、同労基署長から、無給医の労働者性を認めたうえでの、つぎのような内容の是正勧告と指導票による指導が下された。

是正勧告
労基法24条
・大学院生の医師に対して令和元年10月28日から同年11月9日の間の外来診療に対する賃金を支払っていないこと
指導票
・勧告した以外の外来診療についても同様に労基法の時効の2年間に遡って実態調査を行い、その結果確認した労働時間に従って賃金を支払って下さい。
・医師の明確な労働時間管理の確保の観点から令和元年7月1日付け基発0701通達において労働時間該当性が示されているので、これに該当するような研鑽を行うときは労働時間になります。
この通達に基づき大学院生の医師が行っている業務の内容を精査して労働時間に該当する場合は賃金の支払等所要の対応をして下さい。

この是正勧告等が下されたことにつき、申告をした大学院生は、
「診療は労働にあたるという、当たり前の判断がなされてよかったと思います。
大学病院では無給診療は当然という考えが根強くありますが、やり甲斐搾取を前提とした医療など間違っていると思います。教育機関としても社会の規範を遵守し、適切な対応がなされることを願います。」
と、無給医制度の是正に期待しており、その思いは全国の無給医にとって共通であろう。

私はかつて、鳥取大学医学部附属病院の大学院生の医師が、月200時間にも及ぶ時間外勤務の下、前日の朝7時40分から勤務し、夜間も心筋梗塞の患者の緊急手術に徹夜で立会い、そのままアルバイト先の病院に車を運転し向かう途中の国道で、8時55分に過労運転事故で死亡する事件を担当した。
過労運転事故の原因は、鳥取大学医学部附属病院での過重な勤務が原因だとして、鳥取地裁に損害賠償請求を求める裁判だ。
平成21年10月16日に、鳥取地裁はその責任を認める判決を下した。(労働判例997号79頁)
この大学院生の医師も無給医であった。
しかも、大学院生として授業料を払って、「演習」という名目で診療行為に従事していた。
無給であるため、附属病院での無給の長時間勤務に加え、アルバイト先の病院での勤務をいくつもかけもちでしていた。
その過労と直前の24時間以上の断眠の結果の過労運転事故だった。
付属病院では常識だった無給医という、労基法上も社会的にも非常識な制度が、この過労運転事故の原因と言わざるを得ない。
多くの過労死問題に取り組んできたにも拘らず、この事件を担当しながら、無給医問題を意識しなかった。
NHKでこの問題をとりあげたときは、この問題に気づかなかった自分に恥じ入る重いだった。
それが今回の無給医問題に取り組むようになった契機となった。

なお、無給医問題と今回の中央労基署の是正勧告等については、つぎのNHK(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210126/k10012833931000.html)が詳しい。

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