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2020年11月 4日 (水)

過労死をなくすためには

なくして、はじめて知ることが、ひとに始まるなら。
平和のためには、戦いの物語りが
幸せになるためには、不幸せの物語りがもっと、
要るのだろうか。(宮尾節子)

大切な人を過労死・過労自殺でなくした遺族の「物語り」を多く聞いてきたが、未だそれは絶えることがない。
どうしたら、過労死の「物語り」をなくすことができるのか。過労死問題に取り組んで40年、このことをいつも考えてきた。
会社や工場の入口に労基法立入禁止の立札がある「ブラック企業」が過労死を生み出すのか?
労基法が守られていても過労死ラインの時間外・休日労働を認める労使合意の三六協定が結ばれているせいか?
いずれも、過労死を生み出す要因の1つだが、それが最も重要な要因であるとは思えない。
過労死が職場で生じたとき、企業のトップの多くは、当社では労働時間のコンプライアンスをあれほど徹底していたのに、とのため息まじりの声をよく聞く。
労働者の心身の健康が、労務管理上の最重要課題に多くの企業では位置づけられているにも拘らずなぜ生じるのか。
「労働時間の適正把握の懈怠」
出退勤が、タイムカード、ICカードやパソコンのログ等の客観的な記録で把握されることなく、社員の自己申告によりなされており、過少申告されていることこそが過労死の「物語り」を生み出している。
大手広告会社の女性新入社員が、三六協定の時間外労働の限度時間が月70時間であったため、過労自殺する前の時間外労働を69.9時間、69.8時間として申告していたのは何故だったのか。
労働時間の適正把握が怠られれば、労働時間のコンプライアンスの網にかからない心身の健康を損ねる長時間労働が労働現場で生まれ、それが放置されてしまう。
過労死の物語りをもうこれ以上生まないためには、労働時間の適正把握という、あたりまえのことをトップが率先して取り組むことが大切だ。

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