部活顧問教師の過労死と給特法①
北陸のある県の市立中学校A先生が、長時間の部活動の下で脳血管疾患を発症し過労死した件が、先日公務上と認定された。
公立中学校の教師が、長時間の部活動を背景に過労死した件について、私が担当した件のみでもつぎの3件があり、A先生で4件に及んでいる。(参照)
認定年月 顧問の部 発症病名 公務上認定
①平成26年11月 バレーボール部顧問 虚血性心疾患(死亡) 大阪府支部長
②平成27年1月 軟式野球部顧問 急性心不全(死亡) 岡山県支部審査会
③平成27年7月 バレーボール部・駅伝部顧問 脳出血(救命) 高知県支部長
民間なら長時間の時間外・休日労働に従事すれば、時間外・休日についての手当が割増分も含めて支給されるのは、労基法上の常識。使用者がこれを支払わなければ労基法違反として6ヵ月以下の懲役、あるいは30万円以下の罰金となる。
では、公立学校では、この労基法の常識が通用するのか。過労死した教師には時間外・休日の割増賃金が支払われていたのか。否である。
公立学校の教職員については、給特法(正式名は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」)があり、限定された超勤4項目の勤務(生徒の実習、学校行事、職員会議、非常災害等)以外については、校長ら管理者から時間外・休日勤務は命じることができないこととなっている。
では、教師が時間外・休日にしている教材研究、テスト作成・採点、家庭訪問、そして部活動はどうなるのか。
驚くことなかれ。文科省も、更には裁判例の多くも、教師が自主的・自発的に行っている「勤務」であり、管理者の指揮命令下に行われる「労働」ではない、だから時間外手当等は支払う必要はないとしている。
僅か4%の教職調整手当の上乗せで、教師の勤務の専門性、特殊性(わかりません!)を理由にしてだ。
労基法の常識が、給特法により公立学校の教師については通用しなくなっている。
それが、コストのかからない教師の「不払残業」の下での長時間勤務が生じ、過労死を生んでいる。
この点については、更にこのブログで深めたい。
ところで、私がこのブログで一番述べたかったのは、A先生の公務上認定に尽力された、当時の県教組のB書記長のことだ。
B書記長は、A先生の過労死の公務上認定のために、書記長という重責を担うなか、寝食も忘れんばかりにA先生の勤務実態を明らかにするために取り組んだ。
私は、先の3件の中学校の部活顧問の過労死のみならず、教師の多くの過労死・過労自殺の公務上認定に取り組んできたが、教職員組合のトップたる地位(B書記長は、その後委員長に就任した。)にある人が、その中心となって公務上認定に取り組んだ例は聞いたことがない。多くは遺族の孤立した取り組みだ。
教職員組合のなかでは、書記長がそこまでとの批判めいた意見もあったとは聞く。
この、教師の命と健康ファーストの公務上認定の取組みによって、組合員・非組合員を問わず、教師の教職員組合への信頼が高まったことは言うまでもなかろう。
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