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2018年3月16日 (金)

近畿財務局職員の自殺についての公務起因性の検討

近畿財務局の、森友学園の文書改ざんに関与を余儀なくさせられたと考えられる、上席国有財産管理官が自殺したとの報道がされている。
真面目、誠実に国民のために国有財産管理の職務を行う職員であれば、政治のトップ層からの指示の下で、この文書改ざんに関与をさせられていたとしたら、「常識が壊れてしまい」「このままでは一人で責任をとらされる」とも述べていたという自殺に至るまでの、苦悩に満ちたであろう心中を察するに、無念の一言に尽きる。
この問題の政治的な論点は措いて、マスコミの報道に基づいて、この職員の自殺について国家公務員災害補償法で公務上と認められる死であるか考えてみたい。

精神障害・自殺についての業務上(公務上)判断の行政内部の基準となる認定基準は、民間労働者の労災については厚労省、地方公務員については地方公務員災害補償基金、国家公務員については人事院が、それぞれ通達で定めている。
いずれも同じ精神医学的知見に基づき定められており、その表現は異なるものの、内容的には同一性を有する基準だ。

自殺については、業務による強い心理的負荷でうつ病等精神障害を発病した下でなされたときは、正常な認識や行為選択能力が著しく阻害された下でなされた(本人の故意によるものではない)として、業務上となる。
問題は、精神障害を発病するに足りる業務による強い心理的負荷の立証だ。

人事院の認定基準は、

困難な対外折衝等を行った
・その成否が国民生活等に大きな影響を及ぼす対外的な折衝に責任者として対応し精神的緊張を強いられた場合
・立場の異なる関係団体、府省等との間に立って一定の方向性を打ち出すための説得、調整の作業に従事した場合
・大型公共事業プロジェクトの執行に関し、利害の異なる関係者間の調整が難航するなど困難な事態に直面することとなった場合
社会問題化した事案に対応した
・高度な調査技術が必要とされる違法行為の摘発などの業務に従事し、関係者と軋轢を生じる厳しい対応にあった場合」

の出来事を「発症原因とするに足りる強度の精神的又は肉体的負荷がある業務があったと認められる」事由として評価するとしている。
森友学園に係る決裁文書の作成や、虚偽文書の作成に関与を余儀なくされている事実が認められれば、強い心理的負荷があったものとして公務上と当然認められよう。
また、人事院の認定基準は、
特に、発症前6か月間に、1か月間におおむね80時間以上の超過勤務を行っていた実態がある場合には、その実態の具体的把握を含め、発症までの間の勤務に関する負荷の過重性の分析を十分に行うことが必要であるため、調査を慎重に行うこととしている。
前記の業務に加えて「1か月間におおむね80時間以上の超過勤務」(月100時間を超える時間外勤務があったと報道されている)が重複していれば、その総合評価として公務上と認められることはより明白と言えよう。

厚労省の認定基準で検討すると、公務上であることは、より分かりやすい。
業務に関連し、違法行為を強要された出来事があり、その出来事が、
・業務に関連し、重大な違法行為(人の生命に係わる違法行為、発覚した場合に会社の信用を著しく傷つける違法行為)を命じられた
・業務に関連し、反対したにもかかわらず、違法行為を執拗に命じられ、やむなくそれに従った
・業務に関連し、重大な違法行為を命じられ、何度もそれに従った
・業務に関連し、強要された違法行為が発覚し、事後対応に多大な労力を費やした(重いペナルティを課された等を含む)

のいずれかに該当するときは、心理的負荷は「強」と評価され、業務上と判断される。
この出来事が仮に「中」程度のものとされても(そのように低く評価されることは考え難いが)、月100時間を超える時間外労働が認められれば、前記の出来事とこの長時間労働との総合評価により「強」と評価され、業務上と認められる。

ご遺族が公務上の認定請求手続を行うことは、違法行為の事実と、それを職員に強要した事実を解明することによって、亡くなった職員の名誉、尊厳を守るとともに、ご遺族には手厚い公務災害補償がなされることになる。
更に、真摯に国の財務行政に従事した職員の命を、国が安全配慮義務を怠ったため奪ったことに対する国家賠償責任も当然生じよう。

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