過労死110番30周年を迎えて
1988年に過労死110番が始まって今年で30周年になる。
この年の4月に大阪過労死問題連絡会が全国にさきがけて過労死の電話相談を行った。
受付時間の10時から電話は鳴り続いた。
働き盛りの40代、50代の夫の脳・心臓疾患の過労死についての妻からの悲痛な相談だった。
この大きな反響を受けて、全国規模での過労死電話相談を、当時過労死に取り組んでいた弁護士や医師らに呼びかけ、6月に全国で過労死110番が取り組まれた。
私にとって過労死110番は、労働現場の個別・特殊な問題から、一般・普遍な問題として考えさせる大きな転機となった。
過労死110番の30年は、概略的に言えば、はじめの10年は労災認定、次の10年は企業の賠償責任、最近の10年は過労死等の予防と言うことができよう。
過労死・過労自殺の労災認定は、過労死110番の始まる前の認定率3%から、今では30%を超えるに至っている。
企業賠償責任も、最高裁電通過労自殺判決を契機に大きく前進し、3年前の過労死等防止対策推進法の下での、国や企業による防止対策は、その逆流もありながらも一歩ずつ進むことに期待したい。
私が担当する過労死・過労自殺事件の多くは、地方の孤立した遺族・被災者からのものだ。「旅する弁護士」として、全国各地の事件に取り組んでいる。
過労死問題解決への歩みは進みながらも、当然労災認定され、企業責任のある事件であるのに取り組みを躊躇していることが少なくない。
また、家族・知人が、労災認定等の救済の手続が困難、かつ費用と時間がかかると思い込んで、「善意」で手続を引き止める場にも出会うことが少なくない。
過労死110番の30周年を通じて、遺族・被災者の労災認定、企業賠償責任の道は広く拓かれてきた。
救済されるべき遺族・被災者が全て救済されるよう、「働かせ方改革」による労働時間の液状化に抗して、働く者の立場からの「人たるに値する生活を営むための生活を充たす」(労基法1条1項)労働時間の規制による過労死予防を願いながら、過労死110番30周年の新年を迎えている。
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