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2017年12月26日 (火)

副業・兼業による過労死・過労自殺

○「働き方改革」の一環として、政府は「柔軟な働き方に関する検討会」を開催し、そのガイドラインの策定に向けた議論を進めている。

○そのなかで、テレワークなどのほか、副業・兼業を促進する方向でのとりまとめが行われようとしている。検討会では、
「副業・兼業を希望する労働者が年々増加する一方、多くの企業では、副業・兼業を認めていない現状にある。業種や職種によってさまざまな実情があるが、社会の変化に伴い企業と労働者との関係が変化していく中、労働者が主体的に自らの働き方を考え、選択できるよう、副業・兼業を促進することが重要である。また、労働者の活躍をひとつの企業内に限定しない副業・兼業は、企業にとって優秀な人材を活用する手段ともなりうる。」
として、「幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要であ」りとし、行政の対応を求めている。

○労基法は、労働者の人として値する生活を確保するための最低基準であり、そのためには岩盤規制たることが求められるというのが私の持論だ。
36協定、とりわけその特別条項で、労基法の労働時間規制は、労使合意の下でその岩盤は大きく陥没し、液状化している。「柔軟な働き方」も、労基法の最低基準をないがしろにした労働の液状化をもたらすことに警戒しなくてはならない。

○若年を中心とした労働者の少なからずの者は、既に経済的にダブルジョブ・トリプルジョブと、副業・兼業をせざるを得ない状況となっている。その結果、複数事業所での勤務時間を通算すれば、過労死ラインを超える長時間労働に従事し、その結果、過労死・過労自殺が生じている。

○しかし、兼業・副業による長時間労働があっても労災として認定されない。厚労省は、労災保険法の趣旨は、労基法で定められた個々の事業主の業務上災害についての補償責任を保険化したものであり、複数事業主の下での勤務で長時間労働が認められても労災として認定しないとしているからだ。

○また、1つの事業主の下での長時間労働が認められたとしても、労災補償の額は、副業・兼業して得ていた給与の額を合算して算出するのではなく、1つの事業主から得ていた給与の額が基準となる。労災と認定されても、それまで得ていた給与と比べて、著しく低額の補償しかされないことになる。

○副業・兼業による働き方の液状化には反対するが、その議論をするなら、副業・兼業における過労死等の労災認定の考え方、労災補償額の算定方法につき直ちに見直すことが必要だ。

○現行法の下でも、労災保険法の趣旨が、事業主全体による業務に内在する危険から生じた災害についての補償と位置づければ、厚労省が通達を発出することにより見直しは可能だと考える。現にかつては、補償額については合算すべしとした大阪労働局の通達もあった。

○そして何より大切なのは、副業・兼業の下で必ず生じる長時間労働をどう規制するか、労働時間の把握を複数事業主の間において、いかなる方法によって行い、行いうるのかである。

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