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2017年6月 9日 (金)

連続勤務による過労死を通じて、労基法「改正」を考える

法定休日についての勤務の上限を定めない36協定の下で、発症前6ヵ月間に4日しか休まない連続勤務の下での女性の過労死は大きな反響を呼び、本年6月8日の朝日新聞(朝刊)の「記者有論」でも、阪本輝昭記者が、その問題点を取り上げている。

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この事件を担当した弁護士として、36協定についての労基法「改正」との関係で私の考えをまとめてみた。

1 連続勤務のなかでの過労死
故斎藤友己さん(当時50才)は、平成27年11月24日午前5時頃、自宅で心臓疾患の疑いで死亡しました。
本件発症前において、友己さんは弁当製造販売業を営む防府市内の会社で、営業車による弁当の配送等の業務に従事していました。友己さんの配送等の業務は午前と午後に分かれ、その間には10分程度の休憩時間のみしかありませんでした。かつ、休日は月に1回さえ取得できず、本件発症前6か月間においては、平成27年6月22日(月)、7月15日(水)、8月13日(木)、11月13日(金)の僅か4日しか取得できておらず、平成27年8月14日(金)から11月12日(木)までの間は91日間の連続勤務となっています。
友己さんの本件事業場における労働時間はタイムカードによって把握されており、本件発症前6か月間の労働時間は、

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となっており、平成19年3月に入社して以来、同様の過重な勤務が続いていました。

2 山口労基署長の業務上の決定
友己さんの遺族は、山口労基署長に対し、友己さんの死亡は業務上であるとして、遺族補償給付等の支給請求をしました。
厚生労働省の認定基準は長期間の過重業務につき、時間外労働が発症前2か月間ないし6か月間において月あたりおおむね80時間を超えるときは、業務と発症との関連が強いとして業務上と判断するとしています。
山口労基署長は本年2月2日付けで、本件発症前2か月間における月当たりの時間外労働は77時間50分と、おおむね80時間となっており、かつ連続勤務の負荷が加わっていたとして業務上と判断し支給決定を下しました。

3 法定休日を含め全ての休日労働に働かせることができるとした三六協定による過労死
この会社の三六協定は、時間外・休日労働の限度時間について、時間外労働は月45時間、年間360時間と厚生労働省の定める告示どおりとなっており、特別条項の定めはありませんでした。一方、休日労働は、土曜・日曜・国民の祝日のすべてにおいて、午前7時から午後4時までの間休日労働させることができる(即ち、労基法の定める週1回の法定休日も含め、全ての休日に勤務させることができる)内容となっていました。
友己さんの過労死が生じたのは、現在、労基法「改正」の議論で問題となっている時間外労働について、特別条項によってではなく、法定休日も含めて年間365日連続勤務ができると定めた休日労働についての条項にあったのです。
過労死と三六協定を考えるとき、つい時間外労働についての特別条項の問題のみに目が向いてしまいますが、時間外労働と共に定められている法定休日についても限度を定めないと過労死は生じてしまうのです。
時間外労働(ここには週1回の法定休日の労働時間は含まれません)が月45時間前後、それと別枠に定められた法定休日に1日8時間働くと、週40時間を超える労働時間は月あたり【45時間+8時間×4(日)=77時間】となります。
友己さんの働き方はこのような働き方だったのです。

4 労基法「改正」における法定休日についての議論の欠落
政府の「働き方改革実行計画」には三六協定の限度時間を労基法で、
①一般条項としての月45時間、年間360時間
②臨時的な特別な事情のあるときは月平均60時間、年720時間
そして、
③繁忙期は単月で100時間未満、2か月間ないし6か月間の平均で80時間以内
と定めるとしています。
③については法定休日も含めてとしていますが、①、②については法定休日分は別枠になっており、法定休日に勤務させる日の限度は定められていません。
①でも法定休日の限度がなければ友己さんのような過労死が生じます。②では法定休日を含めれば過労死認定基準を大きく上まわることになります。①、②とも「法定休日を含めて」との基準にしなければ、過労死防止にはなりません。

5 労基法「改正」は反対です
最後に、③の基準は法定休日を含んでいますが、現行の過労死の認定基準そのものです。認定基準は、異常な出来事から発症前1週間主義、更に現行の6か月主義と救済の道を広げてきました。
行政の認定基準の不合理さを、遺族とそれを支援する人々が訴訟を通じて、判例を積み重ねるなかで、あるかなきかの救済の道を広げ固めてきたのです。
現行の認定基準が労基法に定められてしまえば救済の道を広げることはできず、認定基準に達しないため行政で業務外とされ、訴訟で争っている遺族にとって労基法が高い壁とたちはだかることになります。
企業に対する損害賠償訴訟においても、労働の現場においても、過労死ラインでの働き方は労基法で公認された働き方と、開き直った主張がされかねません。更には、かつては過労死ラインを超えた36協定があたりまえとなっていた外食系の事業場でも、現在では過労死ラインを下まわるものとなっていますが、再び労基法の過労死ラインまで上限をひきあげることも考えられます。
今回の内容の法改正は「労働者が人たるに値する生活を充たすべきものでなくてはならない」(1条1項)とする労基法に反するものであり、過労死ラインでの労働を法認し、過労死の労災認定の救済の道を広げる遺族の営みを阻むものと考えます。

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