法定休日の限度なくして、過労死防止なし
―「働き方改革実行計画」を斬る!その②―
働き方改革の実行計画によれば、時間外・休日労働の限度時間につき、
①週40時間を超えて労働可能となる時間外労働時間の限度を、原則として、月45時間、かつ年360時間とし、違反には次に掲げる特例を除いて罰則を課す。
②特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とする。
③ この上限については、
ⅰ 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たさなければならないとする。
ⅱ 単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならないとする。
ⅲ 加えて、時間外労働の限度の原則は、月45時間、かつ、年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とする。
を定めている。(ブログ参照)
③の繁忙期であれば、過労死ラインギリギリで働かせることができる基準は、過労死防止と、その救済のために取り組んできた弁護士の1人として到底容認できない。
ここでは①②について語り、③については後ほど深めたい。
①②については「時間外労働」を限度としており、週1日の法定休日についてはその限度を定めていない。
①についてみると「時間外労働」は月45時間を限度としているが、「法定休日」についての限度はない。①の基準は厚労省が定めた現行の三六協定の一般条項に定められた限度だ。
「法定休日」の全てに、しかも1日の労働時間の限度なしに働かせることが可能になってしまう。
月に時間外労働が45時間に加えて、法定休日(月4日)に1日8時間働かせたら、月の時間外・休日労働は
45時間+8時間×4日=77時間
と、ほぼ過労死ラインで働かせることになる。
私は、実際そのような働き方で過労死し、労災認定された事件を担当した。
朝日新聞本年5月5日の朝刊の社会面トップで、NHKも全国放送でこの過労死事件を報道した。
1日8時間前後の勤務だが、法定休日も含め全ての休日に働かせることができる36協定の下、6ヵ月間に僅か4日しか休日がとれずに働いた弁当配送社員Aさんのケースだ。
倒れる前には90日を超える連続勤務が続き、週40時間を基準とする時間外・休日労働は発症前6ヵ月間(それ以前もほぼ同様の勤務だが)に月あたり75時間前後続いていた。
②の「臨時的な特別の事情がある場合」の月平均60時間、年間720時間についても「時間外労働」についての限度であり、法定休日の勤務についての限度がないこと、①と同様だ。
法定休日の勤務は少なくすることを、法的義務でなく、努力義務とする議論もあるようだが、努力義務では、過労死防止にならない。
②の限度基準では、法定休日に1日8時間勤務するとしても、月の時間外・休日労働は、
60時間+40時間=100時間
まで認められることになる。
①②の限度基準は、法定休日を含めておらず、かつ法定休日については、日数についても、1日の労働時間についても、限度が定められていないことから、過労死を防止する規制になっていない。
人は、休日をとることによって疲労を回復し、明日から働くことの力を得ることができる。
休日なしに働くことは、疲労・ストレスが蓄積する一方で、その回復をすることができない。
法定休日を含めた限度時間の規制が不可欠だ。
では、「法定休日を含んで」とする③の限度基準は過労死防止に足り得るのか。
その評価は次のブログで述べよう。
« 過労死ライン超えの勤務 中学教諭は58%との文科省調査 |
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