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―「働き方改革実行計画」を斬る!その②―
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2017年5月15日 (月)

過労死遺族の救済の道を閉ざす三六協定の「上限規制」
―「働き方改革実行計画」を斬る!その③―

働き方改革実行計画は、一時的に事務量が増加する繁忙期においては、
 ①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たさなければならないとする。
 ②単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならないとする。
 ③加えて、時間外労働の限度の原則は、月45時間、かつ、年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とする。
と、労基法を改正するとしている。

この基準は脳・心臓疾患について厚労省が平成13年に定めた認定基準に基づいている。

私が、過労死問題に取り組み始めた40年近く前には、発症当日あるいは前日の異常な出来事しか業務上と判断されなかった(災害主義基準)。
過労死という言葉はなく、労基署で過労死と主張しても、過労の蓄積で労働者が死ぬはずがないと冷笑される時代だった。

しかし、災害主義基準の下で業務外とされた遺族・被災者が裁判で争うなか、この基準の不合理さを指摘し、業務上と認める判決が重ねられた。
その結果、’87年には、発症前1週間の短期間の業務の過重性を評価する基準(発症前1週間基準)に認定基準は改正された。

しかし、なぜ過労を1週間しか評価しないのか。長期間の過労の蓄積が過労死を生み出すとの思いで、再び1週間基準の下でも業務外とされた遺族らは裁判で争い、勝訴率が50%前後という状況が生まれるなかで、’01年に現行の発症前6ヵ月間の長期間の業務の過重性を評価する基準(発症前6ヵ月基準)に改正されるに至った。

過労死の労災認定による救済は、行政の認定基準の下で業務外とされても、それにめげることなく裁判で争い、認定基準の不当性を判決で明らかにするなかで広げられていった。

しかし、現行の認定基準の下で救済されなかった多くの遺族らは、現在の月80時間を過労死ラインとし、それ以下の時間外労働しか認められないと切り捨てられる、あるいは6ヵ月より前の期間についての過重労働は原則として評価しない認定基準の問題点を裁判で争っている。

現行の過労死の認定基準に基づく働き方が、労基法で36協定の限度時間を定められれば、この認定基準の問題点を裁判で明らかにして、その救済の道を広げようとしている遺族らにとって、労基法は救済への大きな壁として立ちあらわれることになる。
企業に対する損害賠償についても、企業側からは労基法が認める範囲で36協定を定め、それに基づく働き方をさせていたにすぎないとの居直りの主張がされかねない。

「希望とは道のようなものだ。はじめはあるかなきかだが、多くの人が歩むことによって道ができる」という言葉がある。
「災害主義基準」から「1週間基準」、そして「6ヵ月基準」と、多くの遺族がめげることなく道を歩む営みのなかで、過労死救済の道は広く固められてきた。

今回の労基法改正の動きは、過労死防止のみならず、過労死遺族らの救済という視点からも、遺族らの労災認定基準の道を広げ固める長い間の営み、そしてこれからの営みに対し、大きな壁となってしまう。

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