過労死防止学会の自動車運転労働の分科会に参加して
過労死防止学会第3回大会が、本年5月20日~21日に、東京の専修大学で開催された。
2日目は5つの分科会に分かれて、職種別の過労死の現状と、その防止の方策についての議論が交わされた。
私は、第1分科会に参加し「過労死事案から見た道路貨物運送業の過重労働」と題して報告した。
過労死(救命含む)の認定件数は、道路貨物運送業が突出して多く、毎年、全業種の認定件数の3~4割に達しており、平成27年度では、認定件数251件中82件となっている。
貨物運転者の過労死の認定件数が、全業種のなかで抜きんでて多いのは、言うまでもなく、その長時間労働と夜勤・不規則労働の点にある。
近年、私が担当した事件を別表にしたが、いずれも業務上と認定されている。
貨物運転者の過重な勤務は勿論であるが、運転日報、タコグラフ、点呼簿などの客観的な勤務記録があることが認定につながっている。
厚労省は「自動車運転者の労務改善基準」を定めているが、貨物自動車運転者については、最大月320時間までの拘束労働時間を認める内容となっている。月に休みなく、日々拘束10時間の労働に従事しても、更に加えて20時間の拘束労働時間が許される内容だ。
「改善基準」であるはずが「過労死基準」となっている。
また、国交省は、過労運転等による事故防止の視点から「勤務時間及び乗務時間に係る基準」を定めているが、一の運行の限度時間を144時間としている。
144時間÷24時間=6日間
の連続した勤務を認めており、その間、運転者はサービスエリア等で運転席後方の仮眠床で休息しながらの勤務を強いられることになる。
私が担当した長距離運転者の過労死事件では、自宅に戻っての休息は勿論、着替えもできないため、妻と連絡してサービスエリアで下着や生活用品を受け渡していたという。
このような貨物自動車運転者の勤務状況は、労働現場の問題であるとともに、それ以上に労働者、そしてその家族の生活時間という点から考えることが必要だ。
労基法は「労働条件は労働者が人たる値する生活を営むための必要を満たすべきものでなくてはならない」と定めている。
貨物自動車運転者の勤務の改善が急務だが「働き方改革実行計画」では、36協定の限度時間についてさえ、5年後の先送りとなっている。
過労死防止対策は、まず、貨物自動車運転者の過重労働の改善から始めなくてはならない。
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