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2016年11月25日 (金)

村上春樹の長編小説の書き方に教えられたこと

11月18日(金)は静岡へ、19日(土)は広島へ、20日(日)は島根の浜田へ、21日(月)は東京から新潟の長岡へ、そして22日の今、早朝東京を新幹線で発って岡山に向かっている。どこを列車等で走っても紅葉の盛り、山燃える季節です。
変なルートの旅行とお思いでしょうが、旅行でなく、過労死や過労自殺の裁判や、ご遺族との打合せのための出張なんです。
過労死のご遺族が話を聞きたがっているとの連絡があると、すぐに全国どこでも飛んでいってしまう、それが私の「悪いくせ」なのです。

車中で裁判のための書面(準備書面といいます)を書こうと思ったのですが、村上春樹の『職業としての小説家』(新潮文庫)の「時間を味方につける―長編小説を書くこと」を読んでいます。
長編小説を書くには「仕込みの時間」をかけて「じっくり養生する」こと、その時間が家庭のお風呂と違う温泉のように「いや、じんわりくるんだよ、これが。うまくいえないけどさ」の差を生み出す。
第一稿を書き終えた後も、休みの時間をとることで「養生しながら」何度も書き直し、第三者(彼の場合は奥さんとのこと)の意見を聞き、「けちをつけられた部分があれば何はともあれ書き直そうぜ」、こんな「トンカチ仕事」を「ゲラ」が出来た後も繰り返し、「力の及ぶ限りにおいて最良のもの」を書くべく努力する。
「もう少し時間があればもっとうまく書けたんだけどね」「締切りに追われないと小説なんて書けないよ」、そんな時間に追われたせわしない書き方でなく、自分の意志で時間をコントロールできるようにならなくてはならない。そのためには日々規則性をもって原稿を書き、そのためにはフィジカルにも鍛えておかなくてはならない。(彼はフルマラソンやトライアスロンもする。)
長編小説家としての彼の持論を述べています。(是非本文を読んで下さい。)

村上春樹の長編小説を書くにあたってのこの持論は、弁護士である私が、長編の最終準備書面を書くにあたっても多くのことを教えているように思いました。
もっとも弁護士の場合は、準備書面は長編であることより、論点に集中、凝縮したものが求められるのですが。
コンマの1つにもこだわる時間をかけた「トンカチ仕事」によって、裁判官を温泉の如く「ジワ~」と説得できる準備書面が完成できるのでしょう。

こんな駄文を書いていたおかげで晴天の富士山を見すごしてしまいました。

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