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2016年11月21日 (月)

ブラック企業と隠れブラック企業

過労死問題について語られるとき「ブラック企業」という言葉が使われることが多い。
「ブラック企業」とは何か。色々言われているが、私は過労死との関係で考えるとき、「労働者の心身の健康を損ねるおそれのある社内体制のある企業」と考えている。

私が担当した大手居酒屋チェーンの石山駅店に大卒で入社した吹上元康さんが、24才の若さで(電通過労自殺事件の2人も24才)心疾患で死亡した事件がその典型と言えよう。
この企業は、初任給を約19万円(残業代別途支給)と就活情報に表示していた。
入社時の研修で、19万円のうち12万円が基本給、7万円は時間外勤務月80時間分の「役割給」との説明がされ、実際4月に就職後、月100時間近い勤務に就くなか9月に過労死している。
時間外労働の限度時間を定めた三六協定も、特別条項で月100時間と定めている。
厚労省の過労死の認定基準は、発症前1ヵ月間におおむね100時間、あるいは2ヵ月間ないし6ヵ月間に月あたりおおむね80時間の時間外労働が認められるときは過労死として認定することを定めている。(過労死ライン)
この企業においては、賃金体系(役割給)も三六協定(特別条項)も、過労死ラインを超える社内体制を有しており、その結果、前途ある若き青年の命が奪われている。
この過労死の損害賠償事件で大阪高裁は、「責任感のある誠実な経営者であれば自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは自明」として、企業の、更には社長、専務の個人責任も認めている。(大庄・大阪高裁判決「労働者の生命・健康は至高の法益」参照

また、ある建設会社の40代の営業マンが過労死した事件では、彼が営業時常に携帯していた営業日誌には、「毎日10時まで働くくせをつけよ。早く帰ったり遅く帰ったりは家族も困る」と記載されている。

タイムカードがあってもブラック企業である実例を挙げよう。
あるファミリーレストランチェーン店の企業では「稼働計画」(勤務シフト)は絶対であるとの社長通達により、この勤務シフトに基づき出・退勤並びに休憩時間の打刻を社員に強制しており、そのなか25才の店長は心疾患により過労死している。

企業自ら過労死が生じる社内体制を構築している企業は「ブラック企業」との誹りを免れない。

しかし、過労死等はブラック企業のみならず、社会的にも就活においても、大手企業と目されている企業にも生じている。

過労死問題を考えるとき、ブラック企業に注目してしまうと、この問題を矮小化してしまうことになる。
優良企業と目されている大手企業における過労死は、今回の電通事件で社会的な注目を浴びたが、私が担当している事件をみても、多くの大企業において過労死は生じている。
そのキーワードは、「労働時間の適正把握の懈怠」である。社内的に労働者の心身の健康を損ねることのない法令遵守体制がいかに詳細に定められていても、労働時間の適正把握体制が構築されていなければ、過労死等を防止することはできないことは、このブログで何度も強調してきたことだ。

過労死防止は、まず労働時間適正把握体制のチェックから、それなしには優良企業といえども明日は隠れブラック企業との社会的非難、著しい企業価値の失墜を招くことになる。

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コメント

松丸先生の、「労働時間の適正把握の懈怠」というご指摘、その通りだと思います。

そのようになる原因は、①国が労働時間の上限規制を行っていないこと、②違法労働に対する甘い罰則、③労基署の機能の貧弱さ、④組合機能の貧弱さ(我が国の多くが企業別組合であること)、⑤勤労(長時間労働含む)を美徳とする古い日本の価値観、などが挙げられると思います。

私は約3年前ドイツである研修(労働関係ではないです)を受けた時、ノルウェーやシンガポールの方と、お互いの国の働き方について話しました。私が、法律上年休は年20日間あるのに事実上ほとんど取得できない日本の現状を話したら、彼らはそのおかしな状況を理解できませんでした。私は、「それが日本の習慣なんだから、しょうがないんだよ・・・」、としか答えられませんでした。そのような私に対して彼らは、「ユニオンがあるだろう。ユニオンに入って闘えー!」と言ってきました。彼らのその発言は、組合活動をほとんど知らない私にとって、とても新鮮でした。ああ、これが本来(?)の労働者の姿なのか、と衝撃的でした。

そして本日、私が所属する労働組合は、使用者側と懇談会(という名の団体交渉)を行いました。日本では組合活動を否定的に考える人が少なくないですが、ドイツでの経験は私の組合活動を後押ししてくれています。

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