過労死・過労自殺の実際の件数を考える
平成27年度の脳・心臓疾患の過労死(死亡事案)の労災認定件数は96件、過労自殺(自殺未遂含む)は93件となっている。
しかし、この認定件数は、日本の過労死・過労自殺の実態を反映したものになっていない。
厚労省の平成22年度の人口動態調査によれば、60才未満の就業者の脳・心臓疾患での死亡者数は約9000人、一方、平成25年労働力調査によれば、週間就業時間35時間以上の雇用者のうち、月末1週間の労働時間が60時間を超える者は、男性は15%、女性は5%となっており、男性の雇用者数の方が多いことを考えると10数%となる。
このような統計結果から推測すると、過労死(死亡事案)は1000件を下まわることはあるまい。過労死(死亡事案)の認定件数は前記のとおり、平成27年度では96件であり、推定される過労死の件数の10分の1にも満たない。
また、警察庁による平成27年の自殺者の原因・動機詳細別の調査結果によれば、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者数(死亡)は2159件となっている。これに対し、過労自殺と認定された件数は前記のとおり93件に留まっている。
過労死・過労自殺と労災認定された事案の件数は、実際の推定件数と比較すると氷山の一角に過ぎない。
次のブログでは、なぜ、多くの遺族が、過労死・過労自殺の労災認定に踏み出さず、ましてや企業責任の追及の損害賠償請求に至らないままになっているのかを考えてみよう。
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