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2016年6月24日 (金)

心筋炎・心筋症と過労死の労災認定

心筋症や心筋炎等、先天性の心疾患を持病として持ちながら、過重な長時間労働に従事するなか、死亡したり、重い後遺障害を残した方についての労災認定や損害賠償の相談も少なくありません。

心筋症等の先天性心疾患と業務との相当因果関係については、認定基準は、「旧認定基準では、『先天性心疾患等(高血圧性心疾患、心筋症、心筋炎等を含む。)を有していても、その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合であって、業務による明らかな過重負荷によって急激に著しく重篤な状態に至ったと認められる場合には、業務と発症との関連が認められる。』として取り扱ってきたところである。認定基準では、先天性心疾患等に関する考え方は明記されていないが、旧認定基準における取扱いを変更するものではない。」としています。

ですから、心筋症等の先天性心疾患等を被災者が有していたとしても、「その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合」は、認定基準の定める業務による過重負荷(発症前1ヵ月間におおむね100時間、又は発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間の時間外労働)が認められる場合は、業務が相対的に有力な原因となって発症したものとして業務上と判断されることになります。

心筋症や心筋炎の持病があると、長時間労働があっても持病のせいと考えがちですが、それまでの長時間労働でも支障なく勤務していたのであれば、「病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合」です。

労災認定や会社の責任の追及に取り組んで下さい。

2016年6月 3日 (金)

海外赴任中の過労死等の労働災害の労災補償は?

海外赴任中に過労死等の労働災害が生じたとき、労災保険の海外派遣者の特別加入制度に加入していなくても労災補償を受けることができるのでしょうか。

厚労省の通達によれば、本社・支店等、日本の事業場から海外子会社等に派遣された場合、日本の事業場からの業務についての指揮命令に基づき勤務を行っている場合は、特別加入手続なしに日本の労災保険が適用され、海外子会社等の指揮の下で勤務を行っている場合は、特別加入手続をしないと労災保険の適用はないとしています。即ち、業務についての指揮命令の実態等に基づき総合的に判断すべしとしています。(昭和52年3月30日基発第192号)
数年に亘る長期間の派遣でも、本社・支店等、日本の事業場からの指揮命令下で業務を行っている等の実態があれば、特別加入することなしに日本の労災補償を受けられるのが原則です。

しかし、労基署では、海外出張と海外出向とを分けて、海外出張は特別加入なしでも労災補償を受けられるが、海外出向(子会社に籍を置く場合)は特別加入しないと労災補償は受けられないと説明されることが多いのではないでしょうか。

この点につき、中小運送会社の東京営業所に勤務していた社員が、営業所に在籍して中国の子会社に長期間に亘って出向中過労死した事件につき、東京高裁は本年4月27日、出向中も東京営業所の指揮命令の下で業務を行っていた実態に基づき、特別加入していなくとも労災補償を受けられるとの判決を下しました。

海外派遣先での業務についての指揮命令の実態が重要ですが、その実態は海外派遣者の業務内容により様々であり、労基署の判断も必ずしも厚労省の通達に沿ったものとは言えないことも少なくありません。
前記の東京高裁の事案も、労基署や地裁では、特別加入していなかったとして、労災補償の対象にはならないとされていました。海外滞在期間が長期間か、子会社に出向したのか、など外形上で特別加入の要否を説明することも少なくないようです。

特別加入するかどうか判断に苦慮するケースについては、特別加入するのが海外派遣者の労災補償による保護のためには必要だと思います。
また、特別加入による労災補償(給付基礎日額を決めて加入します)より、通常の労災補償の額の方が上まわることがありますので(特に過労死のように不払残業代があり、それが給付基礎日額に反映されていないとき)、そのときは特別加入していても、通常の労災補償としての請求をすることも考えて下さい。

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                                〔日本経済新聞2016年5月31日〕

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