教師の部活動と過労死①
私が担当している教師の救命されたものも含む過労死事件で、昨年3件につき公務上の認定を得た。
いずれも公立中学校の部活動顧問の教師の事案だ。
①大阪府下のバレー部顧問(26才)、②岡山県下の野球部顧問(31才)、そして③高知県下の陸上部顧問(50代)の過労死(過労疾病)である。
地方公務員の公務上認定(民間労働者では労災認定)の判断は、各都道府県や指定都市にある地方公務員災害補償基金支部長によって行われ、公務外と判断されたときは支部審査会に審査請求ができ、支部審査会でも公務外にされたときは本部の審査会に再審査請求を行い、そこでも公務外とされたときは公務外とした判断を取り消すことの訴訟を、地方裁判所に提訴することになる。
①と③の事案は支部長段階で公務上と認められ、②の事案は支部長で公務外とされたため支部審査会に審査請求をし、そこで公務上と判断されている。
いずれの事案も、部活動の顧問として、放課後や朝練の部活や、休日の公式・練習試合による長時間勤務によって、心臓疾患や脳血管疾患を発症し、倒れている。
部活動による教師の過重な長時間勤務は、
「中学校で部活の担当に就くと、教師の忙しさが更に拍車が掛かる。平日は毎日6時半までクラブ活動、7時になってようやく職員室の机に向かって教材研究とか、ほかの事務の仕事が始められる。土曜、日曜は練習かあるいは練習試合。夏休みもない。クラブ活動から解放されるのは試験期間中だけ、その間は試験の問題作り。試験が終われば部活がスタートして、採点、成績評価もある」
(第169回通常国会・参議院文教科学委員会の質疑のなかでとりあげられた私信)
というのが実態である。
当然、教職員給与特別措置法が超勤を認める4項目に該当しない超勤がなされている。
私が担当した事案のいずれも、これに等しい勤務状況下で過労死等に至っている。
民間であればブラック企業で生じているような、心身の健康を損ねることが明らかな長時間勤務が、学校現場では公然と行われていると言っても過言でない。
私は、部活を通じて生徒たちが互いに切磋琢磨し、体力の向上や健康の増進等を図りながら、仲間との連帯感、豊かな感性、創造性及び社会性をはぐくむなど、学校教育の中でも人格形成に果たす役割が大きく、意義のあるものであることを否定するものではない。私自身や息子も、部活のなかで生きるうえで必要な多くのものを学んできた。
しかし、部活が顧問の心身の健康、家庭生活、更には教師としての本務である授業を損ねるような状況の下でなされていることについて、教師の過労死事件に多く取り組んできた弁護士として疑問を感じざるを得ない。
このブログ上でも、このテーマを今後検討しようと思う。ご意見をお寄せ頂ければ幸いです。
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