息子さんの名誉回復と、過労死等をなくすための13年間の取り組み
平成14年6月13日、当時34才だった新潟県職員のOさんが自殺により死亡したことについて、新潟県の安全配慮義務違反の責任を追及する訴訟が、本年7月21日新潟地方裁判所において和解により終結した。
亡くなってから13年余り、長き年月をかけ、Oさんのご両親は息子であるOさんの名誉を守り、県職員全体の心身の健康を守るため心血を注いできた。
Oさんは、県の教育庁財務課施設係の職員としての月100時間を超える時間外勤務と過大な業務量のなかで、平成11年11月にうつ病を発病し、心療内科に通院するにようになった。
うつ病を発病したなか、公務に従事することの窮状を上司らに訴えていたにも拘らず、本件自殺前の平成14年4月には、自己申告による時間外勤務命令簿においても111時間45分、登退庁簿によれば128時間34分の、健常な職員にとっても心身の健康を損ねる長時間勤務に従事するなか自殺に至った。
この自殺につき、公務上外の判断を行う地方公務員災害補償基金新潟県支部長は公務外との決定を下したが、審査請求を行い、同支部審査会は平成21年1月に公務上と判断する逆転裁決を行った。公務上と認められるまで7年近くの年月を要している。
ご両親は教育長や県知事との交渉による解決を求めたが、県は法的責任を認めず、平成24年6月には新潟地裁に民事調停を求めたが、県がここでも責任を認めなかったため、同年12月に同地裁に安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟を提訴し、
・精神疾患発症前の安全配慮義務違反(精神障害発症防止義務)
・精神疾患発症後の安全配慮義務違反(精神障害増悪防止義務)
を争点にして、県の責任を明らかにしていった。
提訴後3年を経て和解による解決に至った。
和解の内容は、
(1)被告は、被告の職員であったOが自殺した件について、Oに対し哀悼の意を表する。
(2)被告は、本件と同様の事態が繰り返されることのないよう、再発防止に努める。
(3)被告は、原告らに対し解決金の支払義務があることを認める。
この事件は新潟市の近藤明彦弁護士と共に取り組み、私は長い年月新潟の地に足を運んで、ご両親の、息子さんへの深い悲しみと、その名誉を回復し、同じ悲しみを繰り返さないという思いに動かされながら取り組んできた。
ご両親にとっては、過酷と言っても過言でない長い年月であったが、息子さんの死が公務上と認定され、県との損害賠償事件で実質的に県の責任を認める和解が成立し、更にはOさんもその制定を望んだ過労死等防止対策推進法が昨年制定され、国・地方自治体をはじめとした過労死等の防止への取り組みの第一歩が踏み出されたことが、ご両親の慰めの1つになれば幸いである。
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