長崎大学職員の過労自殺を業務上と認めた判決
―過労自殺事件における発病の時期の重要性―
私が職員の遺族(妻)の代理人として担当した、長崎地方裁判所で過労自殺の業務上外を争った事件で、裁判所は業務上と判断し、業務外とした労基署長の処分を取り消しました。
労基署長は、被災者は平成21年1月に風邪の様な症状が生じたことをうつ病エピソードの初発症状であるとして、それ以前には業務による心理的負荷を与える出来事は前年7月の異動しかないとして業務外とし、訴訟でもその旨の医師の意見書等を提出して立証しようとしました。
確かに発病の時期を平成21年1月とすると、それ以前には異動とそれによる業務の困難さは認められるものの、強い心理的負荷が認められる出来事はありません。
しかし、2月から自殺に至る4月までの間には、月100時間を超える時間外労働や、仕事のうえでの上司の叱責等、ストレスのかかる多くの出来事が認められる事案でした。
訴訟では、発病した時期が、被告である国の主張する1月であるのか4月であるのかが争点となり、判決は3月下旬から4月までとしました。裁判所は証人調べをすることなく、労基署の調査した結果に基づき、またその間にはうつ病を発病する強い心理的負荷の生じる出来事があったとして業務上とし、労基署長の判断を取り消しました。
発病の時期を1月から4月とすることで業務上とした、コロンブスの卵(立証は決して容易ではありませんでしたが)の如き判決ですが、精神障害・自殺の労災認定での発病の時期の重要性を明らかにした判決です。
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