サービス残業があるときの労災の年金額の算定
給付基礎日額は、発症(死亡)した日の直近の賃金締切日を基準にして3ヵ月分の賃金の日額(平均賃金日額)を基準にして算定されます。
過労死・過労自殺の事件では、未払いの残業手当がある場合が殆どです。かつては会社が実際に支払った額のみを基準にして給付基礎日額は算定されていました。
しかし、ご遺族の「夫は死んだ後もサービス残業なんでしょうか」との声を聞いて、不服申立てや訴訟で争った結果、現在では未払残業手当も含めて給付基礎日額は算定されるようになりました。
厚生労働省は平成22年2月25日付けの基労発0225第1号の「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」との通達で、労災保険の補償額の基礎になる給付基礎日額(過去3ヵ月の平均賃金)の算定にあたっては、「現実に既に支払済となった賃金のみをいうのではなく、実際に支払われていないものであっても、平均賃金の算定事由発生日において、賃金債権として確立しているものも含むものであることから、給付基礎日額の調査に際しては、未払い賃金の有無についても留意して行うこと」としています。
私が担当した給付基礎日額を争った事件は以下のとおりです。
地方公務員について公務上外を判断し、遺族補償年金を支給するのは地方公務員災害補償基金(地公災)です。地公災はサービス残業を含めて年金を算定するのをずっと認めていませんでした。
私が担当したこの点を争った地公災を被告とする事件で、平成22年8月26日奈良地方裁判所は、県立病院の研修医が過労死し、公務上と認定された事件につき、未払いの時間外・休日・夜間手当等も加算して遺族補償額の基礎となる平均給与額(過去3ヵ月の平均給与日額)を決定すべきとして、これを加算せずに決定した原処分を取消す判決を下し、大阪高裁、最高裁はこの奈良地裁の判決を支持しました。
その結果、地方公務員についても不払いの給与があれば、その額を含めて平均給与日額(労災の給付基礎日額にあたる)を算定することになっています。
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