過労死等の予防は適正な労働時間の把握なくしてはあり得ない―弁護士として過労死等の事件に取り組むなかでの所感②
労基法の遵守も、三六協定による時間外労働の限度時間の定めも、職場で労働時間が適正に把握されてこそ意味をもつ。労働時間が適正に把握されなければ労基法も三六協定も機能せず、過労死等防止の機能を果たさない。
私が担当したいくつかの事件について、被災者が自己申告した時間と、パソコン・警備記録等による実態としての時間を比較するとつぎのようになる。
(1)地銀のシステム開発担当行員(40才)の自殺(平成26年10月17日熊本地裁判決)
自己申告 実態(パソコン等)
H24年7月 34:30 109:48
8月 38:30 129:45
9月 60:30 168:16
(2)鉄道会社の総合職社員(28才)の自殺(平成27年3月20日大阪地裁判決)
自己申告 実態(パソコン等)
H24年3月 72:45 254:49
4月 39:15 148:51
5月 35:30 113:43
6月 44:00 162:17
7月 45:00 141:09
8月 40:15 130:32
9月 35:15 162:16
(3)ファミレス店長(25才)の過労死(平成26年12月8日山形地裁鶴岡支部和解)
稼働計画 実態(警備記録)
H22年10月 41:07 142:12
11月 60:15 151:49
12月 52:32 128:26
(4)新入の松山市職員の自殺(平成26年3月19日地方公務員災害補償基金愛媛県支部公務上認定)
自己申告 実態(パソコン入力)
H23年4月 4:30 37:05
5月 18:30 57:48
6月 21:20 68:07
7月 3:00 65:02
8月 11:00 121:15
いずれの事件も、会社は被災者の常軌を逸した長時間労働を認識、あるいは容易に認識しうるにも拘らず、何らの是正措置もとらないまま被災者は過労死等に至っている。
職場の労働時間把握体制の見直しと、その是正の検討が過労死等防止の基本だ。
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