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2011年5月27日 (金)

大庄・大阪高裁判決「労働者の生命・健康は至高の法益」

東証一部上場企業である大庄が経営する日本海庄や石山駅店に、大学を卒業し正社員として平成19年4月1日から勤務していた故Mさん(当時24才)が、入社してわずか4ヵ月にして心機能不全で死亡した件で、京都地裁は平成22年5月25日「恒常的に長時間労働をする者が多数出現することを前提とした一見して不合理であることが明らかな労働時間(三六協定)・賃金体系の体制」をとっていたとして、大庄のみならずその社長ら取締役4名の個人責任(会社法429条1項の責任)を認める判決を下しました。
大庄と取締役らは大阪高裁に控訴しましたが、京都地裁判決から丁度1年後になる本年(平成23年)5月25日に控訴棄却の判決を下しました。
大阪高裁の判決は、京都地裁の判決より、取締役の責任につき更に一歩踏み込んで、会社法上の責任に加えて、取締役らは大庄の三六協定や賃金体系の下では「現実に従業員の多数が長時間労働に従事していることを認識していたかあるいは極めて容易に認識し得たにもかかわらず、控訴人会社(大庄)にこれを放置させ是正するための措置を取らせていなかった」として、不法行為責任(民法709条)もあわせて認めました。
大庄では、賃金体系は「役割給」として月80時間の時間外労働を前提とし、三六協定は月100時間の時間外労働が年6回認められることになっていました。
控訴審で、会社側は三六協定や賃金体系につき、「その体制は経営判断事項であり、労災認定上の基準時間はその一要素にとどまる。」としたうえ、どのような体制をつくるかは、「経営判断事項にあたり、労災認定上の基準時間は経営判断における裁量権限の行使が著しく不合理とは言えないかどうかを判断するにあたって、検討の一要素である社会情勢等の一事情になるにすぎない。」と言い放っていました。
同時に同業他社の三六協定(例えば、ワタミフードサービスでは月120時間)を提出し、外食産業の三六協定では過労死ラインを超えた時間外労働があたりまえとなっていることを主張しました。
大阪高裁判決は、「責任感のある誠実な経営者であれば自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは自明であり、この点の義務懈怠によって不幸にも労働者が死に至った場合においては悪意又は重過失が認められるのはやむを得ないところである。なお、不法行為責任についても同断である。」と判示しています。
過労死ラインを超える労働時間、賃金体系をとるか否かは経営判断とする会社側の主張に対し、労働者の生命・健康は至高の法益として、誠実な経営者であれば長時間労働による過重労働を抑制するのが当然の責務としたこの判決は、大庄のみならず過労死ラインを超える三六協定や賃金体系をとっている企業に対する大きな警鐘を打ち鳴らしたものと言えましょう。

職場の「病死」「在職死亡」を仕事との関係で見直してみよう

すしチェーン店店員のAさんが、月300時間前後の長時間労働のなか糖尿病が悪化し、糖尿病性腎症や心不全を発症し、働けなくなりました。
天満労基署長は業務上と認めず、休業補償の請求を不支給としたため、先日大阪地裁に不支給処分取消の訴訟を提訴しました。
過労死というと脳・心臓疾病、例えば、脳内出血、くも膜下出血、心筋梗塞等を思いがちですが、うつ病等の精神障害、それによる自殺、更には、判決では喘息や消化器かいよう等も認められ、労働保険審査会はてんかんの発作による死亡についても労災と認めています。
また、基礎疾病、例えば、高血圧、高脂血症、更には心筋炎、心筋症があっても、過重な長時間労働が認められれば、その多くは労災に認定されます。その症状が重いと、主治医の先生は病気のせいと言われるかも知れませんが、倒れる前にその症状を増悪させる業務があることが大切です。
昔(といっても30年程前ですが)は、過労死という言葉もなく、多くは「酒・タバコのせい」「生活の不摂生のせい」、そして「持病のせい」と片付けられてきました。
「病死」「在職死亡」を仕事の過労・ストレスの視点から見直してはどうでしょうか。

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