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2011年4月14日 (木)

精神障害・自殺労災認定基準に関する「改正」に向けての議論について

1 専門検討会での論点
厚生労働省の精神障害・自殺についての認定基準である判断指針は平成11年に定められ、平成21年に、出来事に「ひどいいじめ」や「セクハラ」等を追加する一部改正が行われています。
更に、厚生労働省は昨年10月から「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催しています。
精神障害・自殺の毎年度の請求件数は、平成21年度には1136件にも及び、今後も増加が認められることを踏まえて、労基署での認定実務において、審査に約7,8ヵ月を要しているため、その迅速化を図ることを主たる目的にして開催されています。
第4回(平成23年1月28日)までの議事録は、厚労省のホームページで公開されていますが、そこでは、
① 複数の出来事が存在するときの総体としての心理的負荷の評価のあり方
② それだけで業務上と判断される極度の長時間労働についての基準
③ 100時間を超える時間外労働が、出来事の前後に認められるときの評価
等の議論が行われています。
2 複数の出来事の評価
①の複数の出来事についての評価につき、労基署の判断は、そのうち最も心理的負荷の強い出来事を中心に評価しており、「Ⅱ」の出来事が複数あっても「Ⅲ」と評価していません。
これに対し、多くの判例は複数の出来事による相互相乗作用を評価しており、例えば「Ⅱ」の出来事が複数あれば、総体として「Ⅲ」と評価しています。
この検討会においては、複数の出来事があった場合、その出来事の近接性、連続性を有する場合は総体として負荷を強めて評価する方向は出されていますが、そうでない場合は判例の考え方をとらない方向での議論がなされています。
3 極度の長時間労働
②の極度の長時間労働については、これまで認められた事案は月140時間~160時間の時間外労働であったことを踏まえて、3ヵ月間連続して100時間以上、2ヵ月間以上連続して120時間以上、1ヵ月間に140時間以上の時間外労働ではどうかとの議論とともに、3週間で120時間という方向が示されています。今までの認定実務の基準を追認する内容の議論の域を出ていません。
4 月100時間を超える恒常的時間外労働の評価
③の月100時間を超える時間外労働の評価については、既に厚労省が出している「事務連絡」により、出来事前にそれが認められるときは、平均的な心理的負荷が「Ⅱ」の出来事を「Ⅲ」に修正すること、出来事後にそれが認められるときは、「出来事後の状況が持続する程度」は「特に過重」とするとしています。
労基署での認定状況の統計によれば、「Ⅲ」と評価された事案のうちの91%は心理的負荷は「強」とされ、業務上と判断されています。
ですから、出来事の多くは「Ⅱ」と評価されていますから、出来事前に100時間を超える時間外労働が認められれば「Ⅲ」となり、労基署においてその殆どは業務上とされています。
また、出来事が「Ⅱ」でその後に100時間を超える時間外労働が認められれば、「出来事後の状況が持続する程度」は「特に過重」となりますから「Ⅱ」+「特に過重」=「強」で、当然業務上と判断されることになります(判断指針では、「Ⅱ」+「特に過重」、「Ⅲ」+「相当程度過重」のときは「強」と評価され、原則として業務上と判断されます)。
検討会での議論は、この月100時間の時間外労働のハードルを下げる方向での検討はなされておらず、これまた「事務連絡」に基づく労基署での認定実務をそのまま認めるものとなっています。
脳・心臓疾患の発症前1ヵ月におおむね100時間、発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間に月平均おおむね80時間という時間外労働の基準にも増して、精神障害・自殺についての時間外労働の基準は、発症前1ヵ月に140時間~160時間、出来事と併せてその前後におおむね月100時間と更に長時間の基準となっています。
5 行政の迅速性、効率性の視点でなく、救済の視点からの改正の議論を
この検討会の議論をそのままにしておけば、被災者・遺族の救済の視点ではなく、労災認定行政の審査における迅速性、効率性の視点からの判断指針の改正が行われるおそれがあります。
過労死弁護団全国連絡会議は、救済を広げる視点から判断指針の見直しを求めて、この検討会の検討内容に対する意見書を提出する準備を進めています。
(全国家族の会ニュースに寄稿)

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コメント

大分県職員でも公務災害認定請求事件が発生して、関係職員が事情聴取を受けています。

平成11年から16年にかけて、大分県内水面研究所の職員が、上司や同僚の職員たちから罵倒されたり、殴られたり、除け者にされたりして、うつ状態となり、大分県浅海研究所へ異動してから平成18年には所属長たちがこの職員の自宅へ来てから両親を侮辱したりするなどの事件がありました。そして、この職員が精神疾患になって3年間休職して、公務災害認定請求を起こしています。

地方公務員災害補償基金大分県支部は大分県人事課と同じなので、公務災害認定をさせないように組織ぐるみでイジメやパワハラの事実を答弁書等で隠蔽していることがわかっています。

その証拠として、平成22年4月2日には大分県人事課の人事企画監が、公務災害請求人の母親へ審査請求を妨害するために脅迫の電話をかけてきていました。

公務員の労災認定も、外部の組織が審査するべきです。

ご指摘のとおり、地方公務員の公務上外認定は、各自治体が共同で設立している地方共同団体である地方公務員災害補償基金が行っています。補償の基金を拠出している自治体が共同で作った団体が認定事務を行っているのですから、公務上認定に厳しくなるのは当然で、外部の組織が審査すべきとのご意見は当然です。
因みに、平成13年に過労死の認定基準が民間労働者・公務員を問わず、発症前の長期(6ヵ月間)の過重性を評価する方向で改正されました。労基署での認定はその後5倍以上増加したのに対し、地公災ではそれまでの2分の1に減少する、認定の門戸が広がったのに認定件数は半減する、という異常な状況です。これも公務員バッシングの1つかなとも思います。
休職の件、よろしければ事務所宛にメール(本ブログのプロフィール欄からメールが送信できます。)で連絡ください。

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