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2011年4月14日 (木)

労働保険審査会の救済機関としての改善の方向―テレビ会議システムは是か非か―

1 労働保険審査会での審理と行政訴訟との関係
過労死や過労自殺の行政段階の労災請求手続は、まず労基署長が業務上外を判断し、業務外として不支給の判断をすると、各労働局に置かれた労災保険審査官に審査請求をすることになります。審査官でも不支給となったときは労働保険審査会(以下、審査会といいます。)に再審査請求をします。
かつては労働保険審査会の裁決が下された後でないと、地方裁判所に労基署長の下した不支給処分の取消しを求めて提訴することができませんでしたが、法改正により再審査請求をした後3ヵ月以内に裁決を下さないときは提訴できるようになりました。ですから、再審査請求をして3ヵ月を経過した後は、審査会の再審査請求手続と地方裁判所での行政訴訟を併行して進めることができます。
審査会の棄却の裁決が下されてから提訴した方がいいか、併行して審理を進めた方がいいかは、それぞれの事件によって異なりますが、併行して進めた方がいずれかの手続で業務上と認められればいいのですから(訴訟の場合は控訴することもありますが)、早期の救済という点からは併行して進めた方がよい場合が多いでしょう。
2 テレビ会議システムについて
審査会は、法律上は労基署長や審査官同様、自ら証拠の収集をして調査する権限が認められているのですが、実際には調査が行われず書面審理に近いものになっています。しかし、会社に資料の提出等を求める権限も審査会にはあります。事案によっては審査会に「審理のための処分の申立」をして、会社の資料を取り寄せさせたりすることも必要です。
再審査請求をして最近では3ヵ月から半年位すると審理期日の通知が来ます。東京都港区の労働委員会会館で審理が行われ、請求人は出頭して意見陳述を行うことになっていました。
しかし、法律が改正されて、テレビ会議方式による審理が認められるようになり、請求人は東京の会館に出向かなくても、その選択で各地の労働局で、テレビ電話方式で審理を行うことができるようになりました。
私はこれを2回経験しました。しかし、審査会は50インチの大型ディスプレイが置かれるのに対し、労働局に置かれたテレビは15インチのノートパソコンという小画面のものです。しかも、「パソコンは2台しかないので、出席者は2名まで」と、「審査員の発言が聞き取りにくい、逆にあなたの発言が審査員に伝わりにくいことがあります」と、この手続の説明書には書かれている有様です。委員の顔や表情はそれでは読めませんし、委員の声も聞き取りにくく、また請求人や代理人の意見陳述もどのように審査員に伝わっているのか、よくわかりません。東京まで来る労力と費用を省けるのだから、この程度のもので我慢せいと言わんばかりです。
3 テレビ会議システムは是か非か
審査会での救済率は、平成21年度についてみると業務上外事案については棄却375件に対し、原処分取消として救済されたのは僅か13件にとどまるという低いものであり、請求人や代理人に対し意見陳述と、それに対する審査会の委員の質問がなされるだけということを考えると、東京まで出向くというのも、それなら訴訟に力を注ごう、という気持ちにもなります。
審査会の待合室で、他の事件の審理に来た地方の当事者に声をかけることがありますが、個人で取り組んでおり、短時間で審理を終え、肩を落として審査会を去る方も少なくありません。
審査会の審理を空虚なものにさせてはならない、現状の改善をさせ、救済機関としての機能を回復させるためには、審査会に出向く時間と費用を惜しんではいけないのでしょう。その点からするなら、テレビ電話会議による審理は、地方の当事者の便宜というより、審査会の形骸化を手続の面からも認めることになりかねません。原則として審査会での審理を選択すべきでしょう。と同時に、テレビ会議システムを請求人の立場で考えたものに改善させる取り組みも大切です。
4 審査会での審理にあたり留意すべき点
審査会の手続にあたっては、つぎの点に留意することが大切です。
① 一件記録(プリント)のうち省略部分のあるときはその提出を求めること(審査会にその旨申し出ると省略分のコピーが送付されます)。
② 審理調書のコピーを求めること(審理の日にその請求書類を審査会に提出すると後日送付されます)。
③ 傍聴ができますから、傍聴席を埋めて事件の重要性を委員に注目させること。
④ 労働側の参与委員と予め打合せして適切な質問を参与からしてもらうこと(しかし、参与委員は意見を述べるのみで裁決に関与する権限はありません)。
⑤ 事案によっては、会社への調査申立をして、審査会自ら調査を行うことを申し出ること。
5 審査会の改善の方向
手続の改善を求める点は、救済率をあげ、救済機関として機能するようにさせることは勿論ですが、つぎの点も大切です。
① 一件記録(プリント)を再審査請求後速やかに交付すること(現状は審理期日が決まった後、その期日の2週間程前に交付されます)。
② 審理の時間を長時間にして、事案によっては審査会自ら調査したうえで再度審理期日を開催すること(現状は30分程度の審理時間しかとらず、意見陳述の時間について「書面に書いてあるから」と制限されることが多い)。
③ 棄却の裁決のなかには、その理由が簡略化され、その判断の経過が明らかでないものがある。それを改善すること。
④ テレビ電話方式による審理を改善させ、労働局に置かれるディスプレイを審査会のディスプレイと同様大型にするとともに、音声もはっきり聞こえるものにする。
審査会の手続を実質化するため、審査会の手続を経験した際の不満と怒りをそのままにせず、議論を重ねて家族の会としての申し入れを行うことが大切です。
(全国家族の会ニュースに寄稿)

精神障害・自殺労災認定基準に関する「改正」に向けての議論について

1 専門検討会での論点
厚生労働省の精神障害・自殺についての認定基準である判断指針は平成11年に定められ、平成21年に、出来事に「ひどいいじめ」や「セクハラ」等を追加する一部改正が行われています。
更に、厚生労働省は昨年10月から「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催しています。
精神障害・自殺の毎年度の請求件数は、平成21年度には1136件にも及び、今後も増加が認められることを踏まえて、労基署での認定実務において、審査に約7,8ヵ月を要しているため、その迅速化を図ることを主たる目的にして開催されています。
第4回(平成23年1月28日)までの議事録は、厚労省のホームページで公開されていますが、そこでは、
① 複数の出来事が存在するときの総体としての心理的負荷の評価のあり方
② それだけで業務上と判断される極度の長時間労働についての基準
③ 100時間を超える時間外労働が、出来事の前後に認められるときの評価
等の議論が行われています。
2 複数の出来事の評価
①の複数の出来事についての評価につき、労基署の判断は、そのうち最も心理的負荷の強い出来事を中心に評価しており、「Ⅱ」の出来事が複数あっても「Ⅲ」と評価していません。
これに対し、多くの判例は複数の出来事による相互相乗作用を評価しており、例えば「Ⅱ」の出来事が複数あれば、総体として「Ⅲ」と評価しています。
この検討会においては、複数の出来事があった場合、その出来事の近接性、連続性を有する場合は総体として負荷を強めて評価する方向は出されていますが、そうでない場合は判例の考え方をとらない方向での議論がなされています。
3 極度の長時間労働
②の極度の長時間労働については、これまで認められた事案は月140時間~160時間の時間外労働であったことを踏まえて、3ヵ月間連続して100時間以上、2ヵ月間以上連続して120時間以上、1ヵ月間に140時間以上の時間外労働ではどうかとの議論とともに、3週間で120時間という方向が示されています。今までの認定実務の基準を追認する内容の議論の域を出ていません。
4 月100時間を超える恒常的時間外労働の評価
③の月100時間を超える時間外労働の評価については、既に厚労省が出している「事務連絡」により、出来事前にそれが認められるときは、平均的な心理的負荷が「Ⅱ」の出来事を「Ⅲ」に修正すること、出来事後にそれが認められるときは、「出来事後の状況が持続する程度」は「特に過重」とするとしています。
労基署での認定状況の統計によれば、「Ⅲ」と評価された事案のうちの91%は心理的負荷は「強」とされ、業務上と判断されています。
ですから、出来事の多くは「Ⅱ」と評価されていますから、出来事前に100時間を超える時間外労働が認められれば「Ⅲ」となり、労基署においてその殆どは業務上とされています。
また、出来事が「Ⅱ」でその後に100時間を超える時間外労働が認められれば、「出来事後の状況が持続する程度」は「特に過重」となりますから「Ⅱ」+「特に過重」=「強」で、当然業務上と判断されることになります(判断指針では、「Ⅱ」+「特に過重」、「Ⅲ」+「相当程度過重」のときは「強」と評価され、原則として業務上と判断されます)。
検討会での議論は、この月100時間の時間外労働のハードルを下げる方向での検討はなされておらず、これまた「事務連絡」に基づく労基署での認定実務をそのまま認めるものとなっています。
脳・心臓疾患の発症前1ヵ月におおむね100時間、発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間に月平均おおむね80時間という時間外労働の基準にも増して、精神障害・自殺についての時間外労働の基準は、発症前1ヵ月に140時間~160時間、出来事と併せてその前後におおむね月100時間と更に長時間の基準となっています。
5 行政の迅速性、効率性の視点でなく、救済の視点からの改正の議論を
この検討会の議論をそのままにしておけば、被災者・遺族の救済の視点ではなく、労災認定行政の審査における迅速性、効率性の視点からの判断指針の改正が行われるおそれがあります。
過労死弁護団全国連絡会議は、救済を広げる視点から判断指針の見直しを求めて、この検討会の検討内容に対する意見書を提出する準備を進めています。
(全国家族の会ニュースに寄稿)

花見の回数券

週末、急に思いたって京都の醍醐寺、そして宇治へと花見に出かける。
さまざまなことを思い出させる桜かな
との句どおり、昔の楽しかったこと、悲しかったことを、舞う桜の花びらの1つ1つが思い出させてくれる。
10年程前に「人生の花見の回数券」と題して、恥ずかしながらつぎのような駄文をしたためた。
「人は12枚綴りの回数券を毎年1枚1枚つかいながらその年を生きている。その1枚には家族たちとの団らん、よき友らとの語らい、趣味のスポーツ、文化との出会いなど、人世の楽しさ、喜びがこめられた花見の回数券とも言えよう。多くの人は回数券を5冊使って還暦を迎えたのちも、更に何冊かの回数券を残して豊かな老後をすごしている。
ある日胸のポケットに手をあてたとき、未だ何冊か残されていたはずの回数券が突然1枚も残っていない、これまでの回数券も早送りのビデオのような仕事の忙しさに花見をするゆとりもなく使ってきてしまった、そんな無念な想いを過労死・過労自殺した人びとは残しているのではないか。」
この分を読んだであろうK弁護士より、
また一枚きる観桜の回数券
との返句(?)を頂いた。1年1年を生きていく気魄が伝わる句である。
もう、5冊目の回数券を使い切って、単券の切符も何枚か使ってしまった。あと何枚残っているのか知る由もないが、野垂れ死にするまで、過労死問題と向き合おうと思う。

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