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2009年10月21日 (水)

過労死の認定基準(長期間の過重負荷①)

 過労死として認定される基準として、
 ① 発症直前の異常な出来事
 ② 発症前おおむね1週間の短期間の過重負荷
 ③ 発症前おおむね6ヵ月間の長期間の過重負荷
があります。
 過労死というと平成13年12月12日に発せられた新認定基準(基発1063号)で新たに定められた③の長期間の過重負荷にのみ目がいきがちです。しかし、事案によっては、①あるいは②の点を重視すべきものも少なくありませんので、発症直前、1週間前についての事実を詳しく調査するのが大切です。また、長期間の過重負荷のうち①②を誘因として発症するケースもあります。この誘因があった方が業務起因性がより説明しやすいといえます。
 ③の長期間の過重負荷については、時間外労働が「発症前1ヵ月間に100時間、あるいは発症前2ヵ月ないし6ヵ月間に1ヵ月平均80時間」を超えれば業務と発症との関連性が強いとして、原則として業務上と判断されることになります。
 ここで時間外労働とは、週40時間(30日ではおよそ170時間)を超える労働時間(当該事業所の所定労働時間ではありません。)、1ヵ月間とは30日間のこと、発症前2ヵ月ないし6ヵ月間とは、2ヵ月、3ヵ月、・・・6ヵ月のいずれかの期間の時間外労働の平均が80時間を超えるとのことです。
 時間外労働の計算は、1ヵ月を30日として、発症日(あるいはその前日)から遡って週40時間を超える時間外労働を計算することになります。
 例えば、
  発症前1ヵ月目   62時間
   2ヵ月目   78時間
   3ヵ月目  106時間
   4ヵ月目   40時間
   5ヵ月目   78時間
   6ヵ月目   30時間
の時間外労働があったケースでは、発症前3ヵ月間では(62+78+106)÷3=82時間が1ヵ月平均の時間外労働になりますから、原則として業務上となります。
 サービス残業や持ち帰り残業、QCなどの自主的活動の時間も入りますので、会社のタイムカードや勤怠表の時間外労働をみてあきらめないようにしてください。
認定基準に基づく労基署における実務は、厚生労働省労働補償部補償課職業病認定対策室の作成した「脳・心臓疾患の労災認定実務要領」(平成15年3月)に詳しく述べられています。
 その構成は、
  第1部 脳・心臓疾患の認定基準の解説
  第2部 認定実務
  第3部 調査・取りまとめ様式
  第4部 調査・取りまとめ様式記載例
  第5部 質疑応答集
  第6部 関係通達等
  第7部 脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書
よりなっています。
 労基署の調査のすすめ方とそのポイント、並びに関係文献、通達が一冊にまとめられています。入用な方は御一報下さい。

2009年10月16日 (金)

災害的出来事→発症前1週間の過労→発症前6ヵ月間の過労への認定基準の門戸の広がり

過労死というと、長期間に亘って、長時間の残業や休日出勤が続き、過労がたまって脳内出血や心筋梗塞を発症するケースを考えると思います。
現在では労災認定されている多くは、長期間の過労が蓄積したため倒れるケースです。
しかし、過労死には、
① 発症直前の災害的出来事による発症
② 短期間(おおむね1週間)の過労の蓄積による発症
③ 長期間(おおむね6ヵ月間)の過労の蓄積による発症
の3つのケースがあります。
労災認定に取り組むとき、③にのみ目が向きがちですが、①、②の事実があるかどうか調査することを忘れないで下さい。
私が過労死問題に取り組みはじめた頃は、厚生労働省は災害主義、災害的出来事がないと業務上として認定されませんでした。例えば、納期が迫っていたため24時間連続勤務をしたとか、工場で火災が発生したため重い消火器を持って火災現場に向かって疾走したとかです。労災認定を請求した件数のうち認定されるのは僅か3~5%、認定されなくてあたりまえの時代でした。
しかし、この狭い門戸をこじあけるために、多くの遺族が訴訟を提訴し、行政の認定基準の不当性を明らかにし、勝訴判決を重ねるなかで、1987年(昭和62年)には、発症前おおむね1週間の過労の蓄積を評価する認定基準に改善されました。
しかし、過労の蓄積を発症前1週間のみで評価するのはおかしいとして、労基署の業務外の判断をくつがえす判決が続出した結果、2001年には発症前6ヵ月間の過労の蓄積を認める認定基準に改善されました。
行政段階で業務外とされた遺族が裁判で国(労基署長)の不当な判断にへこたれることなく、争い勝訴したことが、多くの遺族が救済される方向に、行政の認定基準の門戸を広げてきたのです。
「希望とは道のようなものだ。はじめはあるかなきかだが、多くの人が歩むことによって道はできる」との言葉があります。
これから、大切な人を失った悲しみを抱えながら労災認定に取り組もうとする方に、多くの人が歩むことによってできた労災認定の道をこのブログで示すことができたらと思います。

過労死・過労自殺の被災者、ご遺族の力になれば

このノートは、過労死・過労自殺の労災(公災)認定や、企業賠償責任の追及に足を踏み出そうとしている当事者の方や、遺族のためお力になればという気持ちで書き始めました。
ヨーロッパの逸話で、昔、炭鉱夫は、鳥かごに入れたカナリアを携えて炭坑に入ったと言います。カナリアのさえずりが止むとき、自らの身に危険が迫ったことを知り炭坑から避難したと伝えられています。
現代の労働現場における「炭坑のカナリア」、それが過労死・過労自殺ではないでしょうか。その被災者、遺族の救済、それが過労・ストレスの蒸発釜とも言える労働現場を変える力になるのではないか、そんな思いで過労死問題に弁護士として30年近くに亘って取り組んできました。
このノートでは、過労死・過労自殺で大切な人を亡くした人にとって、その労災認定や企業賠償責任を追及しようとする人にとって、私が労基署での労災認定手続や訴訟のなかで得た、役立つ情報を伝えていきたいと思います。同時にこのノートが、過労死をなくすための僅かながらも力になればとの思いを込めて書き綴りたいと思っています。

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